読書

レーモン・クノー あなたまかせのお話

クノーは20世紀中盤に活躍したフランスの作家。 かなり前衛的な手法で作品を書いた作家らしいのだが、今回初めて読んだ。これは短編集で、彼の短編のほぼ全てが収められている。フランスでは長編小説のほうが圧倒的に人気があり、短編小説はあまり読まれない…

スタニスワフ・レム インヴィンシブル

国書刊行会の「スタニスワフ・レム・コレクション」第2期の最初の配本は飯田規和氏の翻訳で「砂漠の惑星」としてハヤカワから出ていた作品の新訳版。 宇宙巡航艦インヴィンシブルは、かつて同型艦コンドルが消息を絶ったレギス第3惑星を訪れる。そこで異形の…

ゲーテ ヴィルヘルム・マイスターの修業時代

昔から一度くらいは読んでおきたいと思っていた「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を読んでみた。全3巻。 まあまずは率直な感想。なんなんだこれ。「ファウスト」には感動したのに、これには全く共感できない。 まず主人公ヴィルヘルムのブルジョア的理…

ローレン・ローズ これだけは見ておきたい 世界のお墓199選

国書刊行会のHPで見かけて、これ面白そうと思ったんだけど高額でとても買えない。というわけで図書館から借りてきて10日余りかかってやっと読み終わった。 これは世界中の199の墓地についてそれぞれ最低一枚の写真とその墓地にまつわる興味深いエピソードが…

スタニスワフ・レム 宇宙飛行士ピルクス物語

国書刊行会から「スタニスワフ・レム・コレクション」の第2期が今月から刊行されることになった。レムファンの私としては喜びのあまり、おさらいではないけど「ソラリス」「虚数」それにこの「ピルクス」と続けて読んでしまった。 「宇宙飛行士ピルクス物語…

ウォルター・テヴィス クイーンズ・ギャンビット

最近Netflixのドラマで世界的に話題になった作品だが、原作は1983年に出た作品。作者のウォルター・テヴィスはデヴィット・ボウイ主演で映画化された「地球に落ちてきた男」やポール・ニューマン主演で映画化された「ハスラー」の作家として有名。今回も映像…

山田風太郎 八犬伝

山田風太郎といえば忍法帖シリーズなど外連味の強い時代小説が有名な作家というイメージしかなくて全く読んだことはなかったのだが、書店でこの「八犬伝」の文庫本が新装で出ているのを見て興味がわいて読んでみた。 これは滝沢(曲亭)馬琴の有名な「南総里…

ウルリヒ・ヘルベルト 第三帝国

以前からドイツという国がなぜワイマール憲法下の民主主義国家からナチスのような極右独裁国家になってしまったのかか疑問だった。そこでこの新書本を読んでみた。 まあ新書本なのでそんなに詳しく書かれているわけではなく、ナチスがどのようにして起こり、…

モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン

さておかげさまで先日退院し、今は今週中の復職を目指して体力の回復に力を入れているわけなのだが、オリンピックも観たい競技が大体終わっちゃったし、それでは本でも読もうかと古本屋に一か月ぶりに行ったら全然商品が入れ替わってなくてなんだかなあ。そ…

原田マハ たゆたえども沈まず

なんだかんだ言ってもはじまってしまえば見たい競技多いオリンピック。入院中でヒマだし初日結構見た。3x3バスケめっちゃ面白い。そんな中だが、その合間の何時間かでサクサク読んだ入院中持ち込んだ最後の一冊。 評判の高さに違わず、史実と虚構を織り交ぜ…

アナトール・フランス ペンギンの島

アナトール・フランスは19世紀末から20世紀初頭に活躍したフランスの作家でノーベル文学賞受賞作家。「舞姫タイス」「シルヴェストル・ボナールの罪」あたりが有名。この「ペンギンの島」はフランスの歴史を、ペンギンが人間に変身した架空の国「ペンギン国…

ジャック・ヴァンス 宇宙探偵マグナス・リドリフ

図らずもジャック・ヴァンス祭りみたいになってしまったが、「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」の残りの一冊「マグナス・リドリフ」を読んだ。これはヴァンスの比較的初期の作品でタイトルロールが主人公の短篇10作を収めている。最初の作品が1948年、10…

中山七里 さよならドビュッシー

入院も2週間。さすがに読む本も枯渇してきたので、病院のデイルームに置いてあった文庫本を読んでみた。 この作家の、岬洋介というピアニストが探偵役の音楽ミステリーシリーズものの第一作で、「このミス」大賞受賞作とかでちょっと評判の作品だ。まあ読み…

ジャック・ヴァンス 夢幻の書

五人の魔王子に復讐を果たそうとするカース・ガーセンの最後の標的はハワード・アラン・トリーソング。 トリーソングはオイクメーニの警察組織IPCCを乗っ取ろうとして失敗。その頃偶然トリーソングが写っているとされる写真を入手したガーセンは、それを餌に…

ジャック・ヴァンス 天界の眼 切れ者キューゲルの冒険

国書刊行会が出した「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」全3巻のひとつ。 ジャック・ヴァンスの作品にはいくつかのシリーズ物というか同じ世界が舞台の作品があるのだが、これはその中で「ダイイング・アース」という世界観を共有する作品の中のひとつ。こ…

須賀しのぶ 革命前夜

平成元年(1989年)、冷戦下の東ドイツのドレスデンの音楽大学に留学したピアニスト真山柊司。ヨーロッパでは東欧の社会主義支配が瓦解しだして、ドイツは東西ドイツ統一への時代の大きなうねりが起こり始めていた。そんな中で真山が見たものは...という感じの…

スタニスワフ・レム 短篇ベスト10

レムの短篇から母国ポーランドでの人気投票の結果選ばれたものを集めた作品集。10作中9作は既訳だが、収録されてるのは全て新訳である。という事はほとんどの作品がすでに旧訳で読んでいたものだったので、購入時にちゃんと読んでないものがいくつかあった。…

米澤穂信 さよなら妖精

入院中に読もうと古本屋さんで買ったのだが、この作家って「古典部」シリーズや「小市民」シリーズでお馴染みの「日常の謎」系の推理ものが得意な作家。 あの二つのシリーズが正直言って馬鹿馬鹿しいと思うのは、例えば「氷菓」で、なぜ千反田えるが教室に閉…

恩田陸 蜜蜂と遠雷

入院8日目。恩田陸「蜜蜂と遠雷」上下巻通算950ページくらいを1日かからず読了。 久々日本人作家の作品で感動した。 私は基本海外文学の読み手だ。なぜ海外文学に魅力を感じるかと言えば、日本で紹介されるような海外文学は世界と直結する問題点を感じさせる…

ジャック・ヴァンス 闇に待つ顔

「魔王子シリーズ」第4巻。ガーセンの復讐の第4の標的はレンズ・ラルク。容貌魁偉で粗野な気性の犯罪者だ。ガーセンはこの男を追ううちに、レンズ・ラルクとその一味がコツァッシュという幽霊会社を通じて詐欺同然の手口でダー・サイ人たちから財産を巻き上…

カズオ・イシグロ 遠い山なみの光

入院6日目。運動不足なので入院している7階から1階のコンビニまで歩くんだけどさっき登ってきたら素通りして8階までいきそうになっちゃった。 さてイシグロの「遠い山なみの光」を読んだ。翻訳小説なのにすらすら読めて三時間もかからず読了。 イギリスの田…

スタニスワフ・レム 大失敗

入院4日目。やっと明日から本格的に治療に入ることになった。一体いつまで入院しないといけないのやら。あまりにヒマなので本の他にもNetflixの動画とか大量にタブレットにダウンロードしてきたんだけど何だかすぐ読み/観終わっちゃいそう。 なんか重量級の…

宮下奈都 羊と鋼の森

入院2日目。 これはピアノの調律師になった青年が主人公の成長物語。調律師という地味な職業について、おそらくは徹底的な取材をしたのであろう、非常に詳しく書かれていてすごく興味深く読んだし面白かった。しかしこれは小説としてはどうだろう? 1番に気…

平野啓一郎 マチネの終わりに

実は昨日から入院してて、長引くかもしれないので多めに本を持ち込んだ。その一冊めを早速読んだ。なんか映画化もされてるみたいなので面白いかなと思って読んでみたのだが、なんじゃこれ。アホみたいな恋愛小説。マジ薄っぺらい。 40歳前後の男女、世界的な…

イワン・エフレーモフ アレクサンドロスの王冠

イワン・エフレーモフは「アンドロメダ星雲」、「丑の刻」などの作品で知られるソビエト連邦時代のSF作家。上に挙げた二作は宇宙探査を描いた作品で、のちのアメリカのSFドラマ『スタートレック』の原型かとも思えるほどのハードSF。書かれた時代の背景から…

新田次郎 アルプスの谷 アルプスの村/白い野帳

「新田次郎全集」の第22巻は名だたる山岳小説で知られる新田次郎のエッセイ作品をまとめた一冊だが、これに収録されている「アルプスの谷 アルプスの村」と「白い野帳」を読了。 「アルプスの谷 アルプスの村」は昭和36年に新田がヨーロッパアルプスを初めて…

チゴズィエ・オビオマ ぼくらが漁師だったころ

舞台は1996年。主人公はナイジェリアの小さな町に住む6人兄弟の4番目ベン。3人の兄イケンナ、ポジェ、オベンベと一緒にいたずらをしては父や母にお仕置きをされながらも楽しく暮らしていた。ある日禁じられていた川で釣りをしたことがばれて父に手痛い折檻を…

佐藤正午 月の満ち欠け

私と同郷の佐世保市出身の作家、佐藤正午が2017年に直木賞を受賞した作品。岩波書店から文庫で出たものを内容などに全くの予備知識なしで読んだ。 初老の男性小山内堅(おさないつよし)は、7歳の少女緑坂るりとその母ゆい、そしてもう一人の男性三角に会う…

須賀敦子 時のかけらたち/地図のない道

須賀敦子全集第3巻の「時のかけらたち」及び「地図のない道」の部分を読了。 「時のかけらたち」は須賀さんが訪れたヨーロッパの様々な場所の記憶を辿って書かれたエッセイ12篇。ここでは主役は「場所」そのもので、その「場所」をめぐっての須賀さん自身や…

フィッツジェラルド 若者はみな悲しい

フィッツジェラルドの短編集を小川高義氏が翻訳した「若者はみな悲しい」読了。 原著は1926年に出たこの作家の3番目の短編集で、1920年代のアメリカの若者たちの青春を描いた9作を収録。 「ギャツビー」と同じようになんとなくきらびやかな雰囲気がある中で…