ジャック・ヴァンス 闇に待つ顔

「魔王子シリーズ」第4巻。ガーセンの復讐の第4の標的はレンズ・ラルク容貌魁偉で粗野な気性の犯罪者だ。ガーセンはこの男を追ううちに、レンズ・ラルクとその一味がコツァッシュという幽霊会社を通じて詐欺同然の手口でダー・サイ人たちから財産を巻き上げ、それを資金に何かを企んでいることに気づく。ガーセンはリゲル星系のアロイシャスからレンズ・ラルクの企みを追ってコーランヌ星系のダー・サイ、そしてメセルへ向かう。

今回はこれまでの三巻よりも5割ほど分量が多いが、訪れる惑星はわずか3つ。その分各惑星の描かれ方はかなり入念で、特に作品の2/5の分量を割き描かれるダー・サイは強烈。その異様な風物、食べ物や人々の性格と暮らしぶり、さらにはハドールというこの星独自のスポーツまで克明に描写される。そんな中でガーセンが紙切れ同然のはずのコツァッシュの株を買い集めるために奔走し狡猾なダー・サイ人と虚実取り混ぜてのバトルを繰り広がるのが面白い。

今回のヒロインはメセルの銀行王の娘ジャーディアン。だがメセルの人々は高慢で彼女の父はガーセンを拒絶する。実はレンズ・ラルクも同じような屈辱を味わっていた。で彼がコツァッシュを使って企んでいた事が明らかに。驚愕(というか唖然)のラストになる。

いや〜ヴァンス、どれを読んでも楽しい。作品に描きこまれた惑星の風物の描写がいつもながら本当に見事。特にこのシリーズでは各章の冒頭に各惑星やそこに住む人々の暮らしなどについて文献が引用されているので、それぞれの惑星が身近に感じられる。今度ヴァンス惑星便覧でも作ろうかしら。

残るは第5巻「夢幻の書」。さあどうなる。