ルーシャス・シェパード タボリンの鱗

前回読んだ「竜のグリオールに絵を描いた男」の続編でシリーズの中編2作を収録。 表題作「タボリンの鱗」はタボリンという古銭商の男がたまたま手に入れたグリオールの鱗を触っているうちに一緒にいた娼婦の女性シルヴィアともども謎の未開の場所に飛ばされ…

ルーシャス・シェパード 竜のグリオールに絵を描いた男

その昔魔術師によって封印された体長1マイルにも達する竜のグリオール。その体は歴史の流れの中で土地の一部となり、その周辺にはいくつかの集落もでき多数の人間が暮らすようになった。しかし彼は麻痺した状態で生きていて、しばしばその邪悪な意図で人々を…

水谷周 現代アラブ混迷史

イスラエルとハマスの戦闘はどんどん泥沼化していくばかり。毎日パレスチナ情勢のニュース見ては「いい加減にしろよイスラエル」と憤るのだが、イスラエルとアラブの対立の歴史についてちゃんと知っておきたいなと思い古本でこの本を見つけて読んでみた。 だ…

ネイサン・ローウェル 大航宙時代-星海への旅立ち-

企業惑星ネリスに住み大学進学を控えた青年イシュメールだったが二人暮らしの母がある日突然事故死してしまう。母の扶養家族として住んでいたネリスを出なければいけなくなり、仕方なく船員として貨物宇宙船ロイス・マッケンドリック号に乗ることになる。 こ…

塩野七生 ローマ人への20の質問

BOOKOFFで100円だったので何の気なしに買った新書本。新書というと結構いい加減な本も多いのだが、これは「ローマ人の物語」という大著が有名な塩野七生氏がローマ帝国について対話形式でわかりやすく解説した本で、めっちゃ面白かった。 「ローマ人の物語」…

小川一水 天冥の標Ⅹ 青葉よ、豊かなれ

ついに全17冊読み切った。長かった。 救世群との和平を成し遂げ、地球艦隊と共にカルミアンの惑星に到達したセレス。しかしその前に超銀河団諸族の連合艦隊が立ちはだかる。彼らはカンミアの女王オンネキッツが恒星を超新星化しようとしているのを阻止しよう…

小川一水 天冥の標Ⅸ ヒトであるヒトとないヒトと

前巻に引き続きメニー・メニー・シープ政府と救世群の戦いが続く中、救世群との和解を実現しようと動き出すイサリは単身エウレカに潜入するが、そこで囚われてしまう。だが救世群も一枚岩ではなく、ミヒルに反感を持っている者もいるようだ。 この辺りまで進…

村山斉 宇宙は何でできているのか

これは幻冬舎新書から出ている素粒子物理学の入門書。文系の私などにはとてもややこしくて考えたくもない素粒子物理学について数式なしで分かりやすく解説した本。 宇宙の起源とかビッグバンやダークマターなどの暗黒物質などについて考えるには素粒子論は避…

小川一水 天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク

前巻から300年後。これまで6巻8冊をかけて語られてきた人類の歴史を経て、ついに第1巻の時間に戻った今巻は「PART1」「PART2」の2冊に分かれているのだが、それぞれが違う内容になっている。 「PART1」は第1巻「メニー・メニー・シープ」で起こった内容を別…

小川一水 天冥の標Ⅶ 新世界ハーブC

前巻から直接続く第7巻。 ジニ号は救援に来た「恋人たち」のシェパード号ともどもセレスに墜落、なんとか生き延びたアイネイアとミゲラはスカウトの友人たちがセレスの地下施設「ブラックチェンバー」で多数の子供達と共に生き延びている事を知る。 そこで友…

小川一水 天冥の標Ⅵ 宿怨

第5巻から150年ほどのち。救世群のリーダー、ヤヒロ家の少女イサリは自然公園的なコロニー「スカイシー3」で遭難しかけていたところを少年アイネイアとその友人たちに救われる。しかし救世軍は秘密裏に異星人と接触し人類に戦いを挑もうとしていた。穏健派の…

小川一水 天冥の標Ⅴ 羊と猿と百掬の銀河

第5巻は前の巻から十数年後に小惑星パラスで農業を営む中年男タック・ヴァンディの物語と、この連作の当初から関わっている超知性ノルススカインの来歴が交互に語られる。 はっきり言ってこの二つの物語は全くと言っていいほど繋がりがない。 タックのパート…

小川一水 天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち

第3巻で救世群によるドロテア・ワット強奪未遂事件の数年後。救世群の青年キリアンが意識を取り戻すといきなり全裸のアウローラという少女に出会いそのまま関係を持つ。そのあとも記憶を失ってはアウローラと出会い関係を持つ事を繰り返す。アウローラは「恋…

小川一水 天冥の標Ⅲ アウレーリア一統

第3巻は第2巻から一気に300年ほど後の時代へと進む。24世紀、人類は宇宙に進出し小惑星帯に無数のコロニー国家を形成していた。2310年、小惑星国家ノイジーラント大主教国の宇宙軍、強襲砲艦エスレルの艦長アダムス・アウレーリアは海賊を掃討する任務の途中…

小川一水 天冥の標Ⅱ 救世群

別な惑星の話だった第1巻とは打って変わって第2巻は21世紀の地球が舞台。2015年、パラオのプーロッソル島というリゾート地で未知の疫病が発生。駆けつけた日本人医師児玉圭伍らだったが、重症の日本人女子高生千茅と謎の男性ジョプ以外は全員死亡してしまう…

小川一水 天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ

これは全10巻17冊という大長編SFの第1巻。上下2冊。 西暦2803年。入植300周年を迎える惑星ハーブCの植民地メニー・メニー・シープ。東西70km、南北40kmの島国だ。化石燃料がないこの星では、300年前に住民を地球から連れてきたが事故で墜落した移民船シェパ…

乙野四方字 君を愛したひとりの僕へ

「僕が愛したすべての君へ」の姉妹編。 パラレルワールドが実在することが証明された世界。大分市を舞台に、両親の離婚の時に父と母のどちらの親についていくかで大きく運命が変わった暦という男の話。こちらの「君を…」のほうでは父と暮らすことを選択。父…

乙野四方字 僕が愛したすべての君へ

これはまあパラレルワールド(今はマルチバースって言うのかな)SFなんだけど、姉妹編の「君を愛したひとりの僕へ」と2冊で1セットのお話。 ブックオフで一冊110円で購入、2日で2冊読んでしまった。一応別々の記事で取り上げることにする。 パラレルワールドが…

Star Trek : Strange New Worlds 第2シーズン②

さてStar Trek : Strange New Worlds 第2シーズンも後半。このあたりからエンジン全開だ。 第7話"Those Old Scientists" はいきなりアニメで始まる。アニメシリーズ「Star trek Lower Decks」の主人公ボイムラーとマリナーのふたりがタイムスリップしてエン…

Star Trek : Strange New Worlds 第2シーズン①

スタートレック:ストレンジ・ニュー・ワールド第2シーズンは今年6月から8月にかけて米国paramount+で配信された。今回も日本での配信はなし。というかいまだに第1シーズンも全く配信されないどころが日本語版が製作されている様子すらない。 というわけで今…

ブルックナー 交響曲第4番

ブルックナーの第4交響曲変ホ長調は「ロマンティック」のタイトルでも知られるこの作曲家の全作品の中でも最も知られた作品である。しかしそれでいて実は、改稿・改訂問題が多いブルックナーの全作品の中でも随一の問題が多い作品であると言えるだろう。 第4…

ヨハン・テオリン 冬の灯台が語るとき

最近流行してるらしい北欧ミステリ。ヨハン・テオリンはスウェーデンの作家。1963年生まれだから私と同じ歳。これは2009年に出た作者の第2作だそうで、ということは結構遅いデビューだったということになる。以下作品の重要な部分についてネタバレがあるので…

ブライアン・グルーリー 湖は餓えて煙る

面白くなかったらメルカリで売ろうと思ってBOOKOFFで100円で購入。 1998年2月。ミシガン州スタベイション・レイクという田舎町で地元紙の新聞記者として働くガスには、地元アイスホッケーチームのキーパーだった少年時代に痛恨のミスを犯して決勝戦に敗れた…

ブルックナー 交響曲第0番、第2番、第3番

ブルックナーは前述の交響曲第1番のあと1969年にニ短調の交響曲を作曲したが、出来栄えに満足しなかったのかのちに「無効(Nullte)」と楽譜に書き込み番号を与えなかったが、「Nullte]には「ゼロ」の意味もあるためのちに「第0番」と呼ばれるようになった。…

キース・トーマス ダリア・ミッチェル博士の発見と異変

2023年。ダークマターを研究する天文学者ダリア・ミッチェル博士は宇宙の彼方からの知的生命体からの通信と思しき電波信号を受信する。この信号の解読に科学者チームが結成されるが、これはメッセージなどではなく、人類のDNAを直接書き換えて進化を促すコー…

ブルックナー 交響曲第1番

ブルックナー 交響曲第1番 ハ短調 作曲:初稿1966年、1968年初演 改訂:1877年 改稿:1891年 交響曲第1番は1866年に作曲され、1877年に最初の小規模な改訂を受けている。これが一般的に「リンツ稿」と呼ばれるもので、その後、初稿の作曲から25年も経った18…

ジャック・キャンベル 彷徨える艦隊シリーズ1-3巻

状態良いし面白くなかったらメルカリで売ろうくらいの気持ちで買ってきたんだが、読んだら結構面白い。 いわゆるスペオペなんだけど、この世界の宇宙艦隊は超光速で航行する技術を持たず、恒星系のジャンプ点と言うところから亜空間回廊を経由してしか恒星間…

シュティフター 森ゆく人

シュティフターの中編小説。「習作集」の中の一作で3章からなる130ページくらいの短い作品。 第1章は「森ゆく人」と呼ばれる老人ゲオルグと森番の息子の少年との交流が描かれ、やがて成長した少年が森を去ると、ほどなくゲオルグも森を去ってしまう。第1章は…

ブルックナーという作曲家について

私はクラシック音楽も好きなのだが、では作曲家ではだれが好きですかと言われたらブルックナーとシベリウスを挙げる。この二人の音楽に共通するのは、ブルックナーにはオーストリアの深い森、シベリウスにはフィンランドの冷え冷えとした大地という自然の壮…

ニール・ドグラース・タイソン 人生が変わる宇宙講座

著者のニール・ドグラース・タイソンはカール・セーガンの後継者とも目される天体物理学博士。これはそのタイソン氏が一般の人にわかりやすく書いた宇宙論の本だ。 私はSFファンという前に宇宙ファンで、そういった書物をいろいろと読んでみたいのだが悲しい…