スタニスワフ・レム 地球の平和

ついに刊行されたレムの「泰平ヨン」シリーズ最終作。長らく翻訳を待っていた作品をついに読むことができて大変嬉しい。 冷戦でエスカレートするばかりの軍備拡張に倦んだ各国の人々は、軍事産業をすべてAIに任せたうえで、月で行うことにする。しかしその後…

ケラー 白百合を紅い薔薇に

オーストリアの作家アーダルベルト・シュティフターが好きなのだが、彼の代表作で6作の短編からなる短編集「石さまざま」という作品がある。これが岩波文庫では『「水晶」ほか』とされて4作しか収録されていない。以前松籟社から2分冊で出ていたが現在は入…

ショーン・タン 遠い国から来た話

今年は延べ一ヶ月にもわたる入院があって、その間ほぼ一日一冊くらい読んだし、トータルではかなり本を読んだ。このブログで記事にしただけで50冊。記事にしてないものもある(実は今月もタブッキを二冊再読した)し、それなりに感銘を受けた作品もあったの…

カウボーイビバップ

1999年に日本で製作された同名のアニメシリーズを海外のスタッフ・キャストでドラマ化したもの。全10回がNetflixで先日公開された。私は原作アニメのファンなので早速観た。日本語吹き替え版はアニメのオリジナルキャストというのも話題だったが、日頃映画も…

モーリス・ルブラン 奇巌城

さて今回読んだのはルパンシリーズでも屈指の傑作とされていてファンも多い「奇巌城」。 ジェーブル伯爵邸で、殺人事件と絵画の盗難事件が発生。負傷したはずのルパンが見つからない中、高校生探偵イジドール・ボートルレが見事に謎を解く。やがて伯爵令嬢レ…

ペーテル・レンジェル オグの第二惑星

全く知らなかった作品だが、メルカリで見つけてしまった以上は東欧SF好きとしては外せないな、というわけで読んでみたハンガリーSF。 2600年前。宇宙探索から母星エーラに帰還した一隻の宇宙船があった。彼らは船内時間で20年に渡って様々な星々を旅してきた…

レーモン・クノー 人生の日曜日

前回短編集「あなたまかせの物語」が面白かったレイモン・クノー。この作家、フツーは「地下鉄のザジ」から読むんだろうけど、中古で出てたのでなんとなくこれを買って読んでみた。 1930年代後半のフランス。5年も兵役についていながら未だに二等兵のヴァラ…

レーモン・クノー あなたまかせのお話

クノーは20世紀中盤に活躍したフランスの作家。 かなり前衛的な手法で作品を書いた作家らしいのだが、今回初めて読んだ。これは短編集で、彼の短編のほぼ全てが収められている。フランスでは長編小説のほうが圧倒的に人気があり、短編小説はあまり読まれない…

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

今年公開された「ガンダム」シリーズ最新映画。早くもNETFLIXなどネット配信で登場。 シャアの反乱から十数年後。宇宙世紀でいえば110年代の中盤。地球へ向かうVIP専用高級シャトル「ハウンゼン」は反連邦組織マフティーを名乗るテロリストの襲撃を受ける。…

スタニスワフ・レム インヴィンシブル

国書刊行会の「スタニスワフ・レム・コレクション」第2期の最初の配本は飯田規和氏の翻訳で「砂漠の惑星」としてハヤカワから出ていた作品の新訳版。 宇宙巡航艦インヴィンシブルは、かつて同型艦コンドルが消息を絶ったレギス第3惑星を訪れる。そこで異形の…

ゲーテ ヴィルヘルム・マイスターの修業時代

昔から一度くらいは読んでおきたいと思っていた「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を読んでみた。全3巻。 まあまずは率直な感想。なんなんだこれ。「ファウスト」には感動したのに、これには全く共感できない。 まず主人公ヴィルヘルムのブルジョア的理…

ローレン・ローズ これだけは見ておきたい 世界のお墓199選

国書刊行会のHPで見かけて、これ面白そうと思ったんだけど高額でとても買えない。というわけで図書館から借りてきて10日余りかかってやっと読み終わった。 これは世界中の199の墓地についてそれぞれ最低一枚の写真とその墓地にまつわる興味深いエピソードが…

永遠の門 ゴッホの見た未来

米英仏共作、2019年のジュリアン・シュナーベル監督作品でゴッホの伝記映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」をNetflixで観た。 まず主演のウィレム・デフォーが自画像のゴッホそっくりでびっくり。アルルに移住するちょっと前くらいからのゴッホの晩年を詩的に…

スタニスワフ・レム 宇宙飛行士ピルクス物語

国書刊行会から「スタニスワフ・レム・コレクション」の第2期が今月から刊行されることになった。レムファンの私としては喜びのあまり、おさらいではないけど「ソラリス」「虚数」それにこの「ピルクス」と続けて読んでしまった。 「宇宙飛行士ピルクス物語…

ウォルター・テヴィス クイーンズ・ギャンビット

最近Netflixのドラマで世界的に話題になった作品だが、原作は1983年に出た作品。作者のウォルター・テヴィスはデヴィット・ボウイ主演で映画化された「地球に落ちてきた男」やポール・ニューマン主演で映画化された「ハスラー」の作家として有名。今回も映像…

山田風太郎 八犬伝

山田風太郎といえば忍法帖シリーズなど外連味の強い時代小説が有名な作家というイメージしかなくて全く読んだことはなかったのだが、書店でこの「八犬伝」の文庫本が新装で出ているのを見て興味がわいて読んでみた。 これは滝沢(曲亭)馬琴の有名な「南総里…

ウルリヒ・ヘルベルト 第三帝国

以前からドイツという国がなぜワイマール憲法下の民主主義国家からナチスのような極右独裁国家になってしまったのかか疑問だった。そこでこの新書本を読んでみた。 まあ新書本なのでそんなに詳しく書かれているわけではなく、ナチスがどのようにして起こり、…

モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン

さておかげさまで先日退院し、今は今週中の復職を目指して体力の回復に力を入れているわけなのだが、オリンピックも観たい競技が大体終わっちゃったし、それでは本でも読もうかと古本屋に一か月ぶりに行ったら全然商品が入れ替わってなくてなんだかなあ。そ…

原田マハ たゆたえども沈まず

なんだかんだ言ってもはじまってしまえば見たい競技多いオリンピック。入院中でヒマだし初日結構見た。3x3バスケめっちゃ面白い。そんな中だが、その合間の何時間かでサクサク読んだ入院中持ち込んだ最後の一冊。 評判の高さに違わず、史実と虚構を織り交ぜ…

アナトール・フランス ペンギンの島

アナトール・フランスは19世紀末から20世紀初頭に活躍したフランスの作家でノーベル文学賞受賞作家。「舞姫タイス」「シルヴェストル・ボナールの罪」あたりが有名。この「ペンギンの島」はフランスの歴史を、ペンギンが人間に変身した架空の国「ペンギン国…

ジャック・ヴァンス 宇宙探偵マグナス・リドリフ

図らずもジャック・ヴァンス祭りみたいになってしまったが、「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」の残りの一冊「マグナス・リドリフ」を読んだ。これはヴァンスの比較的初期の作品でタイトルロールが主人公の短篇10作を収めている。最初の作品が1948年、10…

中山七里 さよならドビュッシー

入院も2週間。さすがに読む本も枯渇してきたので、病院のデイルームに置いてあった文庫本を読んでみた。 この作家の、岬洋介というピアニストが探偵役の音楽ミステリーシリーズものの第一作で、「このミス」大賞受賞作とかでちょっと評判の作品だ。まあ読み…

ジャック・ヴァンス 夢幻の書

五人の魔王子に復讐を果たそうとするカース・ガーセンの最後の標的はハワード・アラン・トリーソング。 トリーソングはオイクメーニの警察組織IPCCを乗っ取ろうとして失敗。その頃偶然トリーソングが写っているとされる写真を入手したガーセンは、それを餌に…

ジャック・ヴァンス 天界の眼 切れ者キューゲルの冒険

国書刊行会が出した「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」全3巻のひとつ。 ジャック・ヴァンスの作品にはいくつかのシリーズ物というか同じ世界が舞台の作品があるのだが、これはその中で「ダイイング・アース」という世界観を共有する作品の中のひとつ。こ…

須賀しのぶ 革命前夜

平成元年(1989年)、冷戦下の東ドイツのドレスデンの音楽大学に留学したピアニスト真山柊司。ヨーロッパでは東欧の社会主義支配が瓦解しだして、ドイツは東西ドイツ統一への時代の大きなうねりが起こり始めていた。そんな中で真山が見たものは...という感じの…

入院中に観た映画など

入院...えーっと何日目?今日はこれまで入院中に見たNetflixの映画/ドラマを紹介。 アン・ハサウェイ主演の映画「シンクロナイズド・モンスター」。失業して飲んだくれになって彼氏に追い出されてしまったダメ女グロリア。故郷の街に戻って同級生の男が経営…

スタニスワフ・レム 短篇ベスト10

レムの短篇から母国ポーランドでの人気投票の結果選ばれたものを集めた作品集。10作中9作は既訳だが、収録されてるのは全て新訳である。という事はほとんどの作品がすでに旧訳で読んでいたものだったので、購入時にちゃんと読んでないものがいくつかあった。…

米澤穂信 さよなら妖精

入院中に読もうと古本屋さんで買ったのだが、この作家って「古典部」シリーズや「小市民」シリーズでお馴染みの「日常の謎」系の推理ものが得意な作家。 あの二つのシリーズが正直言って馬鹿馬鹿しいと思うのは、例えば「氷菓」で、なぜ千反田えるが教室に閉…

恩田陸 蜜蜂と遠雷

入院8日目。恩田陸「蜜蜂と遠雷」上下巻通算950ページくらいを1日かからず読了。 久々日本人作家の作品で感動した。 私は基本海外文学の読み手だ。なぜ海外文学に魅力を感じるかと言えば、日本で紹介されるような海外文学は世界と直結する問題点を感じさせる…

ジャック・ヴァンス 闇に待つ顔

「魔王子シリーズ」第4巻。ガーセンの復讐の第4の標的はレンズ・ラルク。容貌魁偉で粗野な気性の犯罪者だ。ガーセンはこの男を追ううちに、レンズ・ラルクとその一味がコツァッシュという幽霊会社を通じて詐欺同然の手口でダー・サイ人たちから財産を巻き上…