ブルックナーという作曲家について

私はクラシック音楽も好きなのだが、では作曲家ではだれが好きですかと言われたらブルックナーとシベリウスを挙げる。この二人の音楽に共通するのは、ブルックナーにはオーストリアの深い森、シベリウスにはフィンランドの冷え冷えとした大地という自然の壮…

ニール・ドグラース・タイソン 人生が変わる宇宙講座

著者のニール・ドグラース・タイソンはカール・セーガンの後継者とも目される天体物理学博士。これはそのタイソン氏が一般の人にわかりやすく書いた宇宙論の本だ。 私はSFファンという前に宇宙ファンで、そういった書物をいろいろと読んでみたいのだが悲しい…

光文社古典新訳文庫 19世紀イタリア怪奇幻想短編集

これは発売当初から欲しいなと思ってたのだが近所の本屋さんで仕入れてくれなくて、先日隣県の巨大書店を訪れたときに見つけたので購入。 オカルトっぽいものから寓話的なものまで9作を収録。9作とも全く知らない作家の作品で、オペラ「メフィストフェーレ」…

ラブ・ストーリー概論と2023春アニメ

世界中に恋愛を描いた映画や小説は無数にある。恋愛というのは人類が文明を持って以来ずっと人生の重大事件なのだから当然と言えば当然なのだが、物語として恋愛を描く場合、愛し合う二人がいて、その愛の成就を阻む何かの障害が用意され、その障害を乗り越…

エリザベス・ストラウト 私の名前はルーシー・バートン

以前「オリーヴ・キタリッジの生活」という連作短編集を読んで感銘を受けたエリザベス・ストラウトの長編小説。長編と言っても200ページくらいの短い作品なのだが、長さに見合わない重量感のある作品である。 主人公で語り手のルーシーが、1980年代に9週間に…

フェルナンド・イワサキ 悪しき愛の書

1961年生まれのペルーの日系人作家、フェルナンド・イワサキの作品。 作者自身が9歳から23歳までに経験した10回(11回かも)の失恋を、それぞれ短編小説として描いた連作短編風長編小説。それぞれの作品には基本的には直接のつながりはないが、以前の作品に登…

ル・クレジオ アルマ

傑作「黄金探索者」を皮切りに「隔離の島」「回帰」と続いてきたノーベル賞作家ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオのモーリシャス島シリーズ。今回も「黄金探索者」「隔離の島」と同じ中地義和氏の名訳で。 絶滅した鳥ドードーについて調べるという名…

ストルガツキー そろそろ登れカタツムリ

ストルガツキーの「そろそろ登れカタツムリ」を再読。 これは主人公が違う「カンジート編」と「ペーレツ編」の二つの部分からなる作品で、1966年に「カンジート編」が最初に発表された。その後「ペーレツ編」が発表されるとソ連政府に発禁処分に。発表した雑…

スタニスワフ・レム 火星からの来訪者

国書刊行会のレムコレクション第2期、第4巻はレムのSF作家としての事実上のデビュー作である中編「火星からの来訪者」に初期の短編4作、さらに若い日の詩作をまとめた「青春詩集」を収録した一冊。 表題作は、火星からやってきた謎のロボット、アレアントロ…

ストルガツキー リットル・マン

ストルガツキーの「Noon Universe」の一作で1971年の作品。日本では英語版よりも早い1973年に深見弾氏の訳で「ソヴェート文学」という雑誌に掲載されたが、その後は全く出版されていない幻に近い作品。今回掲載雑誌が手に入ったので読んでみた。 「Noon Univ…

マーガレット・ミッチェル 風と共に去りぬ

ヴィヴィアン・リーとクラーク・ゲーブルが主演したあの有名映画の原作小説。文庫本で4~5冊の分量を持つ長大な作品。私はかなり昔の「河出書房世界文学全集」で一か月かけて読んだ。 全くもってすごい小説だ。ヒロイン、スカーレットと相手役のレットという…

ジャンニ・ロダーリ うそつき王国とジェルソミーノ

講談社文庫でイタリアの作家ロダーリの作品が、これまで3冊の短編集が出版されているのだが、4冊目は200ページほどの長編「うそつき王国とジェルソミーノ」。これまでの3冊は内田洋子さんの翻訳だったが、今回は山田香苗さんの翻訳に変更になっている。 大…

シュティフター作品集第2巻 習作集2

さてシュティフター作品集。昨年末に読んだ第1巻に引き続き第2巻を読了。こちらも4作の短編が収められている。 巻頭の「アプディアス」。この作品は実は発表当時すごく評判になったらしいのだが、この作家としては異色の作品。ユダヤ人を主人公にし、その舞…

ヴェルナー・ヴォルフ ブルックナー 聖なる野人

9曲の交響曲と宗教音楽などを遺したオーストリアの作曲家アントン・ブルックナーについての評伝と作品論を収めた一冊。私はこの作曲家の作品がかなり好きで交響曲の音源を相当数持っていて、ある程度はこの作曲家の生涯や作品の成立の経緯なども知ってはいる…

シュティフター作品集第1巻 習作集1

シュティフターは19世紀のオーストリアの作家。私はこの作家の作品が好きで、先日手に入れた松籟社の「シュティフター作品集」全4巻のうちの第1巻をなんとか年内に読了。 4作の中短編が収められているが、うち2作は以前に読んだものの訳違い。 「コンドル」…

ジョージ・R・R・マーティン 「七王国の騎士」

HBOのTVドラマ「ゲーム・オブ・スローンズ」(原作は「氷と炎の歌」シリーズ)の100年ほど前、ウェスタロスの七王国を舞台に草臥の騎士ダンクとその従者で実は王家の生まれの少年エッグが旅先でさまざまな事件に遭遇するという中編3作を収めた作品集。第1作「…

ドント・ルック・アップ

レオナルド・ディカプリオ、ジェニファー・ローレンス主演、Netflixで公開中の映画。 自らが発見した彗星が地球に激突する事に気づいた女子大生ケイトと担当教授のミンディはそれを警告するために大統領府を訪れるが、中間選挙が近づく大統領はまともに取り…

最近読んだ本

随分放置してしまったのでそろそろなんか書かないと生存を疑われそうなので。最近読んだ本まとめて簡単に書きます。 レオ・ペルッツ「テュルリュパン」 これは実は9月くらいに読んだ本。チェコの作家レオ・ペルッツの作品。17世紀、革命の150年前のフランス…

ゲーム・オブ・スローンズ

米国HBO制作のTVドラマ。全8シーズン73話。 アマプラで2か月以上かかって観終わった。 いやーとんでもないドラマだった。 中世ヨーロッパの文化を持つ架空の大陸ウェスタロス。7つの国の連邦国家「七王国」である。北部にウィンターフェルという拠点を持つス…

内田洋子 モンテレッジォ 小さな村の旅する本屋の物語

最近全然本が読めてないのはアマプラで「ゲーム・オブ・スローンズ」を毎日観てる全く本を読む時間が全くないからだ。このドラマは本当にすごい。しかし全73話だったか観るのはなかなかハード。とはいえもう50話過ぎた。まあそれは観てしまってから記事にす…

川端裕人 青い海の宇宙港

種子島がモデルの島、「多根島」に宇宙遊学生としてやって来た小学6年生の駆。虫とか自然が大好きであまり宇宙には興味がなかった駆だったが、宇宙オタクの周太、フランス人ハーフの萌奈美、地元の委員長タイプの希実の四人で作った「宇宙探検隊」のメンバー…

HALO

U-NEXTで配信中の、ゲームソフトが原作のSFドラマ。U-NEXTの無料期間を利用して観た。第1シーズン全9話。 宇宙に進出した人類はコヴナントという異星人と戦争状態に。科学力で勝るコヴナントに対し、人類は戦闘に特化した人間であるスパルタンを前線に投入…

梅津時比古 冬の旅‐24の象徴の森へ-

ヴィルヘルム・ミュラーの詩にフランツ・シューベルトが作曲した連作歌曲集「冬の旅」は音楽史に燦然と輝く名作だ。24曲、ぶっ続けで聴いて1時間10分程度の大曲であるが、愛する人に捨てられ真冬の寒空の下あてもなくさまよう青年の絶望を24曲を通じて描いた…

Star Trek : Strange New Worlds 第9話、第10話

第9話「All Those Who Wander」直訳すると「すべてのさまよう人々」。タイトル的には「さまよい人たち」というところか。 士官候補生のウフーラら3名は一旦任務を解かれ地球に戻ることになるが、その前に行方不明になったUSSペレグリンを発見したエンタープ…

Star Trek : Strange New Worlds 第7話、第8話

第7話「Serene Squall」。エンタープライズは海賊に襲われたコロニーにドクター・アスペンの水先案内で訪れ、海賊船Serene Squallを発見、制圧に向かうが逆にエンタープライズを占拠されてしまう。スポックとチャペルは最後まで抵抗するが捕まってしまい、海…

三秋縋 君の話

2018年に単行本で出た時少し気になったのだのが、なかなか買う気にはなれずにいたらいつのまにか文庫化されていたので購入して読んでみた。 記憶を自由に操作できる世界。そんな世界で無為な人生を送ってきた主人公の青年千尋はある日なにもいいことがなかっ…

Star Trek : Strange New Worlds 第5話、第6話

第5話「Spock Amok」うーん翻訳不能(笑)タイトルについては後述。 ゴーンとの戦いで傷ついたエンタープライズは修理と乗組員の休養を兼ねてスターベース1に寄港。チャペル、オルテガらクルーたちは遊びに出かけるが、パイクはロンゴビアンという宇宙人と交…

伴名練 なめらかな世界と、その敵

2019年だったかに単行本が出て話題になった日本SFの新星による6作収録の短編集。今回文庫化されていたので購入して読んでみた。 作者は1988年生まれだから私より一世代下。まず巻頭に置かれた表題作「なめらかな世界と、その敵」の冒頭でその異常で錯綜した…

シン・ウルトラマン

「エヴァンゲリオン」の庵野秀明による話題の映画「シン・ウルトラマン」を観てきた。 日本に次々と禍威獣と呼称される巨大生物が出現、政府は禍威獣対策のための専任機関機関、禍威獣特設対策室、通称「禍特対(カトクタイ)」を組織してこれに対処していた…

Star Trek : Strange New Worlds 第4話

第4話。Memento Mori「メメント・モリ」 エアフィルターを届けるためにフィニバス3という惑星を訪れたエンタープライズ。しかし惑星は何者かの攻撃を受けていた。生存者を救出するが、ラ・アンはモンスターに襲われたという生存者の少女の証言から襲って来た…