読書

三秋縋 君の話

2018年に単行本で出た時少し気になったのだのが、なかなか買う気にはなれずにいたらいつのまにか文庫化されていたので購入して読んでみた。 記憶を自由に操作できる世界。そんな世界で無為な人生を送ってきた主人公の青年千尋はある日なにもいいことがなかっ…

伴名練 なめらかな世界と、その敵

2019年だったかに単行本が出て話題になった日本SFの新星による6作収録の短編集。今回文庫化されていたので購入して読んでみた。 作者は1988年生まれだから私より一世代下。まず巻頭に置かれた表題作「なめらかな世界と、その敵」の冒頭でその異常で錯綜した…

ジャック・ヴァンス 「冒険の惑星」四部作

ジャック・ヴァンスの「冒険の惑星」4部作を読んだ。 これは原題では「Planet of Adventure」という、ヴァンスの作品としては珍しい書下ろしシリーズとして1968年から1970年にかけて出版されたもので、日本では主人公の名をとって「アダム・リース」シリー…

スタニスワフ・レム マゼラン雲

レムの初期の作品で、著者の意向でこれまで翻訳を許されなかったいわくつきの作品。 2段抜きで450ページにわたるかなりの大部で読むのに相当時間がかかった。 32世紀。人類は巨大宇宙船ゲア号でアルファ・ケンタウリを目指す片道10年の探査に出る。医師の父…

レイモン・クノー 地下鉄のザジ

レイモン・クノーの代表作「地下鉄のザジ」を、白水社レイモン・クノー・コレクションの久保昭博による翻訳版にて読了。 ザジという10歳くらい(?)の女の子がパリに住む叔父のガブリエルに預かられることになってやってくる。ザジはパリで地下鉄に乗ること…

アナトール・フランス 聖女クララの泉

白水社「アナトール・フランス小説集」の第8巻。この作家お得意の、宗教にまつわる短編を集めた作品集。 冒頭に置かれた「神父アドネ・ドニ」で、ここに収められた短編が「聖女クララの泉」のほとりで神父アドネ・ドニによって語られたものを書き留めたもの…

中村真一郎 秋

中村真一郎の「四季」四部作の第3作。私は第1作「四季」を2008年に、「夏」を2014年に読んでいて、今回ようやく第3作を読むに至ったわけだ。前2作の記憶も曖昧ななか読み進めると、前作では語り手である「私」の、自殺同然に亡くなった妻のことに触れながら…

ユヴァル・ノア・ハラリ 21Lessons

ベストセラーとなった「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の著者で、イスラエルの歴史学者・哲学者の著者が、現代人と現代社会の直面する問題について、どのように思考し行動すべきかを語った著作。原著は2018年出版。本文だけで500ページの大著だが大変興味…

ダシール・ハメット  チューリップ

ハードボイルドの創始者ハメットの未完の中編小説「チューリップ」をメインに短編を集めた作品集。古本屋で安かったので購入して読んでみた。 表題作は花のチューリップとは全く関係ない話で、著者自身の身辺雑記のような小説である。表題のチューリップとは…

福永武彦 死の島

今日1月23日は私の最愛の小説、福永武彦「死の島」の日。これを記念して、以前旧ブログに上げたロングレヴューを再掲させていただきます。。 昭和29年1月23日。都内の小さな出版社に勤める小説家志望の青年相馬鼎(そうまかなえ)は、懇意にしている画家、萌…

シュティフター 石さまざま

先日紹介したケラー「白百合を紅い薔薇に」とともに中央公論社「世界の文学」第14巻に収録されていたオーストリアの作家アーダルベルト・シュティフターの代表作。6作からなる短編集。前にも書いたが岩波文庫の「水晶 ほか3編」ではそのうち4作しか収録さ…

スタニスワフ・レム 地球の平和

ついに刊行されたレムの「泰平ヨン」シリーズ最終作。長らく翻訳を待っていた作品をついに読むことができて大変嬉しい。 冷戦でエスカレートするばかりの軍備拡張に倦んだ各国の人々は、軍事産業をすべてAIに任せたうえで、月で行うことにする。しかしその後…

ケラー 白百合を紅い薔薇に

オーストリアの作家アーダルベルト・シュティフターが好きなのだが、彼の代表作で6作の短編からなる短編集「石さまざま」という作品がある。これが岩波文庫では『「水晶」ほか』とされて4作しか収録されていない。以前松籟社から2分冊で出ていたが現在は入…

ショーン・タン 遠い国から来た話

今年は延べ一ヶ月にもわたる入院があって、その間ほぼ一日一冊くらい読んだし、トータルではかなり本を読んだ。このブログで記事にしただけで50冊。記事にしてないものもある(実は今月もタブッキを二冊再読した)し、それなりに感銘を受けた作品もあったの…

モーリス・ルブラン 奇巌城

さて今回読んだのはルパンシリーズでも屈指の傑作とされていてファンも多い「奇巌城」。 ジェーブル伯爵邸で、殺人事件と絵画の盗難事件が発生。負傷したはずのルパンが見つからない中、高校生探偵イジドール・ボートルレが見事に謎を解く。やがて伯爵令嬢レ…

ペーテル・レンジェル オグの第二惑星

全く知らなかった作品だが、メルカリで見つけてしまった以上は東欧SF好きとしては外せないな、というわけで読んでみたハンガリーSF。 2600年前。宇宙探索から母星エーラに帰還した一隻の宇宙船があった。彼らは船内時間で20年に渡って様々な星々を旅してきた…

レーモン・クノー 人生の日曜日

前回短編集「あなたまかせの物語」が面白かったレイモン・クノー。この作家、フツーは「地下鉄のザジ」から読むんだろうけど、中古で出てたのでなんとなくこれを買って読んでみた。 1930年代後半のフランス。5年も兵役についていながら未だに二等兵のヴァラ…

レーモン・クノー あなたまかせのお話

クノーは20世紀中盤に活躍したフランスの作家。 かなり前衛的な手法で作品を書いた作家らしいのだが、今回初めて読んだ。これは短編集で、彼の短編のほぼ全てが収められている。フランスでは長編小説のほうが圧倒的に人気があり、短編小説はあまり読まれない…

スタニスワフ・レム インヴィンシブル

国書刊行会の「スタニスワフ・レム・コレクション」第2期の最初の配本は飯田規和氏の翻訳で「砂漠の惑星」としてハヤカワから出ていた作品の新訳版。 宇宙巡航艦インヴィンシブルは、かつて同型艦コンドルが消息を絶ったレギス第3惑星を訪れる。そこで異形の…

ゲーテ ヴィルヘルム・マイスターの修業時代

昔から一度くらいは読んでおきたいと思っていた「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を読んでみた。全3巻。 まあまずは率直な感想。なんなんだこれ。「ファウスト」には感動したのに、これには全く共感できない。 まず主人公ヴィルヘルムのブルジョア的理…

ローレン・ローズ これだけは見ておきたい 世界のお墓199選

国書刊行会のHPで見かけて、これ面白そうと思ったんだけど高額でとても買えない。というわけで図書館から借りてきて10日余りかかってやっと読み終わった。 これは世界中の199の墓地についてそれぞれ最低一枚の写真とその墓地にまつわる興味深いエピソードが…

スタニスワフ・レム 宇宙飛行士ピルクス物語

国書刊行会から「スタニスワフ・レム・コレクション」の第2期が今月から刊行されることになった。レムファンの私としては喜びのあまり、おさらいではないけど「ソラリス」「虚数」それにこの「ピルクス」と続けて読んでしまった。 「宇宙飛行士ピルクス物語…

ウォルター・テヴィス クイーンズ・ギャンビット

最近Netflixのドラマで世界的に話題になった作品だが、原作は1983年に出た作品。作者のウォルター・テヴィスはデヴィット・ボウイ主演で映画化された「地球に落ちてきた男」やポール・ニューマン主演で映画化された「ハスラー」の作家として有名。今回も映像…

山田風太郎 八犬伝

山田風太郎といえば忍法帖シリーズなど外連味の強い時代小説が有名な作家というイメージしかなくて全く読んだことはなかったのだが、書店でこの「八犬伝」の文庫本が新装で出ているのを見て興味がわいて読んでみた。 これは滝沢(曲亭)馬琴の有名な「南総里…

ウルリヒ・ヘルベルト 第三帝国

以前からドイツという国がなぜワイマール憲法下の民主主義国家からナチスのような極右独裁国家になってしまったのかか疑問だった。そこでこの新書本を読んでみた。 まあ新書本なのでそんなに詳しく書かれているわけではなく、ナチスがどのようにして起こり、…

モーリス・ルブラン 怪盗紳士リュパン

さておかげさまで先日退院し、今は今週中の復職を目指して体力の回復に力を入れているわけなのだが、オリンピックも観たい競技が大体終わっちゃったし、それでは本でも読もうかと古本屋に一か月ぶりに行ったら全然商品が入れ替わってなくてなんだかなあ。そ…

原田マハ たゆたえども沈まず

なんだかんだ言ってもはじまってしまえば見たい競技多いオリンピック。入院中でヒマだし初日結構見た。3x3バスケめっちゃ面白い。そんな中だが、その合間の何時間かでサクサク読んだ入院中持ち込んだ最後の一冊。 評判の高さに違わず、史実と虚構を織り交ぜ…

アナトール・フランス ペンギンの島

アナトール・フランスは19世紀末から20世紀初頭に活躍したフランスの作家でノーベル文学賞受賞作家。「舞姫タイス」「シルヴェストル・ボナールの罪」あたりが有名。この「ペンギンの島」はフランスの歴史を、ペンギンが人間に変身した架空の国「ペンギン国…

ジャック・ヴァンス 宇宙探偵マグナス・リドリフ

図らずもジャック・ヴァンス祭りみたいになってしまったが、「ジャック・ヴァンス・トレジャリー」の残りの一冊「マグナス・リドリフ」を読んだ。これはヴァンスの比較的初期の作品でタイトルロールが主人公の短篇10作を収めている。最初の作品が1948年、10…

中山七里 さよならドビュッシー

入院も2週間。さすがに読む本も枯渇してきたので、病院のデイルームに置いてあった文庫本を読んでみた。 この作家の、岬洋介というピアニストが探偵役の音楽ミステリーシリーズものの第一作で、「このミス」大賞受賞作とかでちょっと評判の作品だ。まあ読み…