ブルックナー 交響曲第0番、第2番、第3番

ブルックナーは前述の交響曲第1番のあと1969年にニ短調交響曲を作曲したが、出来栄えに満足しなかったのかのちに「無効(Nullte)」と楽譜に書き込み番号を与えなかったが、「Nullte]には「ゼロ」の意味もあるためのちに「第0番」と呼ばれるようになった。ブルックナー自身が作品の価値を認めなかったためか後年の2度にわたる改訂ラッシュの時期にも手が加わらず、彼の初期の交響曲の中では唯一版の問題がない作品だ。曲としては十分ブルックナーの個性が出ているもので、第1、第2と比べても遜色のない作品だと思うのだが、演奏される機会は少ない。

個人的にも近年まで聴く機会がなくあまりなじみがないが、聴いてみると結構良い曲だと思う。3種類くらいしか聴いてないのだがハイティンク指揮ロイヤル・コンセルトヘボウが良かったと思う。

その後1872年に第2交響曲1873年に第3交響曲が作曲されたが、この2作はのちの第4同様、後年大幅な改稿を受けて問題のある作品になっている。

第2交響曲ハ短調は1872年に初稿が完成したものの、演奏不能の烙印を押され早速1873年に第1次改訂ののちに初演されている。その後1877年の第一次改訂期に大幅な改稿を受けこれが「第2稿」と呼ばれている。さらに晩年の1892年ごろの第二次改訂期にさらに手が入っているがこれはさほど大きな改訂ではなかったようだ。「初稿」と「第2稿」では第2楽章と第3楽章が入れ替わっている、第4楽章の後半が全く違う展開であるなど結構大きく違っている。演奏時間も「初稿」のほうが10分くらい長いようだ。最近は初稿を取り上げる指揮者も増えている。今年のNHK交響楽団の公演でファビオ・ルイージが取り上げたときも「初稿」による演奏だった。また改訂者によって内容に大きな違いがあるのもこの曲の特徴で、ハース版、ノヴァーク版、キャラガン版とあるのだが発想記号の表記が違ったり細部に結構違いがあったりするようだ。

私が聴いたCDはほとんどが「第2稿」によるもの。ヨッフムの、オーストリアの美しい風景が列車の窓を飛び去って行くような快速な演奏が好きだが、逆にめっちゃ遅いバレンボイムもいい。

第3交響曲ニ短調1873年に初稿が完成、敬愛するワーグナーへの献呈作品となった(このため「ワーグナー交響曲」という副題で呼ばれることもある)が、第2同様演奏不能と言われ早速改訂。1877年に「第2稿」完成。初演するも大失敗。1889年にまたしても改稿、「第3稿」と呼ばれる。結果第3交響曲は第4と並んで多くのバージョンが乱立する問題の多い作品となった。「初稿」には随所にみられたワーグナーの引用がのちの稿では削られている。稿が進むにつれて演奏時間が短くなるのはやはり他の作品同様、無駄を削っていったからなのだろう。

特に「第3」は傑作と言われて愛好するファンも多いようだが、私はブルックナーの作品の中では気負い過ぎている感があって今一つ苦手な一曲だ。