2020-01-01から1年間の記事一覧

ミッドナイト・スカイ

リリー・ブルックス・ダルトンの小説「世界の終りの天文台」を原作にNETFLIXで公開されたジョージ・クルーニー主演・監督による新作映画。 おそらくは核戦争で滅亡の淵に立たされた人類。刻々と放射能汚染が迫る中、科学者オーガスティンは取り残された謎の…

ジャック・ヴァンス 復讐の序章

アメリカのSF作家ジャック・ヴァンスの「魔王子シリーズ」全5巻の第1巻。大学時代に読んで面白かったのでもう一度読んでみたくなって古本で第3巻まで購入。 これは主人公カーズ・ガーセンが、故郷の町を破壊して両親の命を奪った5人の犯罪者に復讐していくと…

須賀敦子 ヴェネツィアの宿

須賀敦子全集第2巻の「ヴェネツィアの宿」の部分を読了。12作の連作エッセイで父との関係を中心に書いてある。 いつも通りの美しい文章と見事な構成力で素晴らしいが、父への複雑な想いからだろうか、普段語り手として一歩下がった視点から語ることの多いこ…

ディケンズ クリスマス・キャロル

言わずと知れたディケンズの超有名クリスマス・ストーリー。本屋さんで新訳の角川文庫を見かけて美しい装丁に惹かれて買った。映画やアニメで見た覚えがあるけど、実は読むのは初めて。 実業家で守銭奴のスクルージは、クリスマスの夜、昔の共同経営者で故人…

メシア

NETFLIXのオリジナルドラマ。全10話。 2019年、シリアに突如現れた「神の子」を自称する男、アル・マシーフ。様々な奇跡を起こしながらイスラエル、米国に現れ一躍世界から注目を集める。CIA捜査官エヴァは彼を追う。米国テキサス州で竜巻から教会とその娘を…

再読 スタニスワフ・レム 星からの帰還

ポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの、有名な「ソラリス」とほぼ同時期に書かれた傑作。多分15年ぶりくらいに再読。 宇宙飛行士ハル・ブレッグはアルデバランへの10年の探査行から地球に帰還するが、地球上では127年が経過していた。右も左もわからない…

リュドミラ・ウリツカヤ ソーネチカ

ソビエト連邦時代を背景に、本の虫で容貌のぱっとしないソーネチカの一生を描いた作品。はっきり書いてはないがソーネチカは1920年前後の生まれのユダヤ系ロシア人だ。図書館に勤めていたある日、パリ帰りの反体制画家ロベルトと出会い結婚する。その後娘タ…

スティーブン・ウェッブ 広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由

最近話題の中国SF「三体」でも取り上げられた、なぜ宇宙人は見つからないのかという問題、いわゆる「フェルミのパラドックス」について考察した本。 もし宇宙に進んだ異星人がいた場合、それが光速を超えるようなオーバーテクノロジーを持たなくても数万年程…

グエン・ニヤット・アイン 幼い頃に戻る切符をください

Facebookの読書グループで翻訳者の伊藤宏美さんにご紹介頂いたベトナムの作家グエン・ニヤット・アイン「幼い頃に戻る切符をください」他一編を読んだ。 表題作はタイトル通りの、中年になって社会的成功も手に入れた男性が、子供時代の仲良し4人組の思い出…

アレン・スティール キャプテン・フューチャー最初の事件

エドモンド・ハミルトンの往年のスペースオペラの傑作「キャプテン・フューチャー」シリーズを、現代のSF作家アレン・スティールがリブートして始めた「新・キャプテン・フューチャー」の第一作。 最近は往年の人気スぺオペのリブートが流行っているのだろう…

梨木香歩 海うそ

200ページくらいの短い作品なのにその鬱蒼とした世界に迷い込んだようになってなかなか読み進めず、読むのに薄い本なのに2週間ほどかかってしまった。 しかし、最後の100ページくらいは一気に読んだ。この人の作品にはどれもびっしり植物が生えているイメー…

孫悟空の遊勇伝 第2シーズン

オーストラリア制作のNETFLIXオリジナルドラマ。2018年に第1シーズン全10話が突如公開され、それがかなりあいまいに終わったので続きあるかな~と思いながら、2年もたってほとんど忘れたころに続編の第2シーズンが公開された。今回も全10話、一話が23分くら…

須賀敦子 コルシア書店の仲間たち

ミラノのコルシア・ディ・セルヴィ書店に集う人々と著者の交流を描いた作品。 須賀さんの作品の中でも評価の高い作品だが、それも納得の内容で、作者の青春の記と言っていいと思う。若い日に理想を追い求めて悩んだ経験のある人には胸に迫る作品だと思う。 …

ウェブスター あしながおじさん

実はこの作品、子供の頃から一度読みたかったのだが、何しろ生まれてこの方ずっと男の子だったもので、代表的な少女小説とされるこの作品にはなかなか手が出なかったのだった。まあ今も男子(というかおっさんorジジイ)なのだが、それはそれ。というわけで…

junaida みち

孫の2歳の誕生日が近いので書店で絵本を探してたらこれを見つけちゃって... 自分用に買ってしまった! タイトルと奥付以外全く字がない絵本で、本の片方、背表紙から見て右側からは男の子が、反対側の左側からは女の子がそれぞれ白い道をたどって歩き始める…

レオ・ペルッツ 第三の魔弾

オーストリアのユダヤ系作家ペルッツの処女作。 アステカ文明を滅ぼしたコンキスタドール、コルテスの前に立ちふさがったのはラインの暴れ伯の異名を取るグルムバッハ。母国ドイツを追われ流れ着いたアステカの地で恩義を受けたアステカ王に義理立てして、た…

2人のローマ教皇

朝から大雨で何もすることがなかったのでNETFLIX映画「2人のローマ教皇」を観た。ヨハネ・パウロ2世の死去に伴って行われたコンクラーベ。保守派のラッツィンガーが当選、ベネディクト16世として教皇になる。それから8年。カトリック教会の方針に不満を抱く…

シー・ユー・イエスタデイ

NETFLIXで公開されているオリジナル映画。ブルックリンに住む黒人女子高生CJは、友人のセヴァスチャンとともに背負い型のタイムマシンを開発し実験に成功するが、CJの兄が警官に強盗犯と誤認されて射殺されてしまう。CJとセヴァスチャンは過去に飛んで事件を…

ナタリア・ギンスブルグ ある家族の会話

戦前から戦後への激動の時代を生き抜いた作者と、頑固者の父と陽気な母、そして作者を含めて5人の兄弟たち家族の物語。 起こったメインのエピソードは時代を追って語られてはいるのだが、それから派生して作者が思いつくままに脱線しながら書いた風なところ…

スペースウォーカー

実は先日、昨年から渡欧していた次女が帰国して、現在同居しているので隔離生活中。まだ3日目だがやる事なくてすでに退屈。まあそんなこんなでHDDレコーダーに録画しっぱなしで放置してたロシア映画「スペースウォーカー」を観た。 人類初の宇宙遊泳を行った…

ル・クレジオ 偶然 帆船アザールの冒険 他

ジャン=マリ・ギュスターヴ・ル・クレジオは2008年のノーベル文学賞受賞者。代表作「黄金探索者」でノックアウトされたが、結構当たり外れの大きな作家でもある。これまで読んだ中で一例を挙げると「黄金探索者」「隔離の島」「モンドそのほかの物語」は当…

ローレンス・オズボーン ただの眠りを

1988年、メキシコ。 あのフィリップ・マーロウが72歳で遭遇した事件。溺死した男ドナルドの保険金支払いについての調査を依頼されたマーロウは、死んだのは別人だということを突き止めるが… マーロウ物は本家のチャンドラー以外にも長編だけで4作、短編なら…

内田洋子 ロベルトからの手紙

内田洋子さんの「ロベルトからの手紙」を読んだ。内田洋子さんはご本人が長く住んだイタリアを舞台に、エッセイのような小説のような作品を描く人で、以前読んだ「ジーノの家」「ミラノの太陽、シチリアの月」が須賀敦子さんのエッセイにも迫る素晴らしい作…

ハートランド物語(第2シーズンまで)

NETFLIXで配信されているカナダのTVドラマ。2007年に放送が始まり現在に至るまで13シーズン214エピソード(とTVスペシャル1本)が制作されている。カナダ・アルバータ州にある傷ついた馬のための保養施設「ハートランド厩舎」を舞台に、母親を自動車事故で亡…

アンリ・ミュルジェール ラ・ボエーム

若き芸術家たちの青春と悲恋を描いたプッチーニの有名人気オペラ「ラ・ボエーム」。その原作がフランスの作家ミュルジェールの「ボエームたちの生活の情景」という小説だというのはオペラのCDやなんかの解説に書いてあって昔から知っていたのだが、これまで…

小川一水 ツインスター・サイクロン・ランナウェイ

百合SFアンソロジー「アステリズムに花束を」に収められていた同名短編の長編化作品。木星型惑星を舞台に、その惑星のガスの上を泳ぐ鉱物の「魚」を採る漁師たちがいくつかの士族を形成して、その伝統が300年続いている。そんな因習で縛られた社会で女同士で…

辻邦生 安土往還記

さて経済ばかりを心配して国民の生命や健康など二の次の日本政府が発令した都府県限定で強制力がない中途半端な緊急事態宣言で一層状況を悪くしている。学生なんかは大学もバイト先も休みだしお店も閉まって不便な東京から故郷に戻る人もいるだろう。そうし…

タブッキ 島とクジラと女をめぐる断片

さていよいよコロナウィルスがヤバくなってきたが、『まだ非常事態宣言を出す事態には至っていない』ってじゃあどうなれば「非常事態宣言を出す事態」なのか。感染者が何千人に達したらとかか?ではそれまでに感染した人は、もし今非常事態宣言を出せば防げ…

スタートレック・ピカード

このたび第1シーズン全10話が完結した「スタートレック」シリーズ」最新作。「新スタートレック(TNG)」のピカード艦長のその後を描く作品。 実家のワイナリーを引き継いで隠棲してるピカードのもとに謎の若い女性ダージが何者かに追われながら訪ねてくる。…

ル・クレジオ 心は燃える

フランスの作家ル・クレジオ。ブログのタイトルを「黄金探索者」とするくらいなのだから私がかなり好きな作家である。ただしこの作家、作品の出来不出来にかなりばらつきがあり、さらに翻訳者がまずいと全く魅力が伝わらない場合もある。この「心は燃える」…