NETFLIXで公開されているオリジナル映画。ブルックリンに住む黒人女子高生CJは、友人のセヴァスチャンとともに背負い型のタイムマシンを開発し実験に成功するが、CJの兄が警官に強盗犯と誤認されて射殺されてしまう。CJとセヴァスチャンは過去に飛んで事件を正そうとするが…
単なるタイムトラベルものSFコメディかと思いきや、そこはさすがにスパイク・リー制作作品、アメリカの黒人問題を取り込んで、今まさに世界で問題になっている「Black Lives Matter」そのものを作品の重要テーマに据えていて、観終わった感触はずっしり思い。何回繰り返してもバッドエンドにしかならないのは一向に解消されないアメリカの人種差別のメタファーであろうし、最後にCJがあきらめずに過去に向かうのも、そういう現実を何とかしたい黒人たちの象徴なのだろう。
SFとしては特に最後の方で、パーツの追加で「過去のタイムトラベルがリセットされる」ことになるあたりからかなり怪しくなってくる。だったら最初の、元カレを怒らすあたりから修正できたんじゃとも思ってしまう。
ラストは賛否両論で、ネットのレヴューとか見るとかなり否定派が多いし、私も観た時はええっこれで終わり!って思ったけど、後になって思えばあの終わりしかないかと思う。ラストで決然たる表情で一人過去へ向かうCJは、間違いを正すためになら何度でもやり直す、という黒人たちの心を現わしているのだ。
序盤で学校の先生役であのマイケル・J・フォックスが登場。さすがに「バック・トゥ・ザ・フューチャー」とは別人の役だが、「タイムマシンを使って何をやるのか」とCJに問いかける。その答えがこの映画そのものだ。「バック・トゥ・ザ・フューチャー」がタイムマシンというガジェットを使って単なるドタバタコメディのエンタメ映画で終わったのに比べて、この作品ではタイムマシンという飛び道具を使っても解決には程遠いことが世界にあることを示したのだ。