Star Trek : Strange New Worlds 第7話、第8話

第7話「Serene Squall」。
エンタープライズは海賊に襲われたコロニーにドクター・アスペンの水先案内で訪れ、海賊船Serene Squallを発見、制圧に向かうが逆にエンタープライズを占拠されてしまう。スポックとチャペルは最後まで抵抗するが捕まってしまい、海賊の頭エンジェルはスポックを人質にして彼女の夫の解放を要求してバルカンと交渉する…

チャペルが大活躍の回。なんとついにあの人とのキスシーンまで‼三角関係に発展するのか⁉ 海賊につかまったパイクが逆に海賊船を奪う(?)手段も面白い。


そしてラスト、ディスカバリーでもすっかり忘れられて…もとい存在が消えていたあの人の名前が!う~んネタバレしたいがここは我慢。彼の今後の登場はあるのかな。
前回ほんのチョイ役ながら再登場したカーク兄だが、今回も出番なし。いつか彼にスポットが当たる日はあるのだろうか。 

 

第8話「The Elysian Kingdom」。
第3話で明らかになったように、Dr.ムベンガの娘ルキアはCygnokemiaという難病に冒されていて、治療法を見つけるまで転送機のバッファに入れてある。そんなルキアにムベンガがいつも読んで聞かせていたのが「The Kingdom of Elysian」という本。エリジアンという架空の王国を舞台にした子供向けのファンタジー小説だ。物語の展開に不満を持つルキアに、ムベンガは「大きくなったら自分のお話を書くといい」と諭す。その折も折、ジョニシア星雲を調査中のエンタープライズは突然航行不能に。負傷者が出たのでムベンガがブリッジに呼ばれるが、ブリッジを訪れたムベンガは自分を含む全員が突然コスプレをして「The Kingdom of Elysian」を演じていることに気づく。

卑屈なキャラになり下がったパイク、にやにや笑う魔法使いのスポック、悪の女王になり切ったウフーラ、タガの外れた姫君のラ・アンなどどれも見もの。エンタープライズ艦内に中世の装飾を施して悪ノリが過ぎるコメディ回と思いきや意外とシリアスな結末を迎える。
ちなみに「The Kingdom of Elysian」は実在しない本。「Cygnokemia」という病気も実在のものではないが、23世紀でも治療不能な病気として病名を白血病(Leukemia)をもじったものにしたのだろう。
ジョニシア星雲が知能を持つボルツマン脳のような存在で、それがまるでソラリスの海のように人類に干渉しているというハードSF的な展開と悪ふざけ的なコスプレ大会が混然となったカオス回。非常に面白かった。

そろそろ英語で見るのも慣れてきた笑笑

三秋縋 君の話

2018年に単行本で出た時少し気になったのだのが、なかなか買う気にはなれずにいたらいつのまにか文庫化されていたので購入して読んでみた。

記憶を自由に操作できる世界。そんな世界で無為な人生を送ってきた主人公の青年千尋はある日なにもいいことがなかった少年時代の記憶を消すことにするが、誤って存在しない幼馴染、灯花の記憶を植え付けられてしまう。不本意ではありながらその甘い記憶を消せずにためらっていたある日、存在しないはずの灯花が目の前に現れる…

この三秋縋という作家は全く知らないが、これはとにかく非常に村上春樹的な作品。語り口といい主人公の孤独ぶりや先輩のスーパーマンぶりなど、様々な要素で村上春樹の作品を連想させる。私は村上春樹は大嫌いで数作しか読んでいないのだが、それでもこの作品と「ノルウェイの森」の共通点をいくつか挙げることができる。だが、そんなアンチハルキストの私がこれをすんなり読めたのは、村上春樹にありがちな「傲慢な主人公」「無意味なセックス描写」「やたらに音楽・芸術について蘊蓄を垂れる」などのマイナスポイントがないからだと思う。

というわけで非常に面白く読んだ。主人公が無気力な青年のはずなのにどことなくアクティブなのがちょっと気になるが、変わった設定の青春小説としてはかなりいい線行ってると思う。途中(B面)から灯花の目線になって謎解きが展開する仕掛けなどなかなか巧みに書かれていて感心した。SFとしての仕掛けは「ナノマシンを使用することで記憶を自由に操作できる」の一点につきるのだが、この技術が新型アルツハイマー病の治療研究から生み出されたという設定もなかなかリアルで、その不治の病である新型アルツハイマーにヒロインが冒されているというのは、最近の小説や映画の世界でよくあるパターンだが、「君の膵臓を食べたい」あたりの、何の病気やらよくわからないのよりはずっとリアルな話に思える。

しかし、SFとしては物足りない。記憶を操作できる技術が普通にある世界に対する考察が足りない。記憶を自由に消したり、事実でない記憶(作中では「義憶」と呼ぶ)を追加できたりするのなら、犯罪捜査など不可能になってしまうし、作中にあったように主人公の母が主人公の記憶を消去してしまったとしても、母親である以上息子に対する義務や権利は残るわけで、そういうことを考えていくと、この技術を(医療などの目的以外で)用いるのは相当社会的な影響が大きく、一般的な実用化はためらわれることになると思われる。その辺りをクリアして普通に使われた場合は、義憶を買うことで知識や技術も強化できるはずで、それなら学校などに通う必要もなくなりそうだ。そのあたりの考察がいまいち物足らない。そこが先日読んだ伴名練「ひかりよりも速く、ゆるやかに」などに及ばないと思ってしまう。

それとなぜ日本の小説ってこんなにウエットなんだろう。読みやすいのはいいがなんだが湿っぽくて、特に今の季節には良くない。

Star Trek : Strange New Worlds 第5話、第6話

第5話「Spock Amok」うーん翻訳不能(笑)タイトルについては後述。

ゴーンとの戦いで傷ついたエンタープライズは修理と乗組員の休養を兼ねてスターベース1に寄港。チャペル、オルテガらクルーたちは遊びに出かけるが、パイクはロンゴビアンという宇宙人と交渉中。スポックは婚約者ティプリンクと再会するがどうも気持ちがかみ合わず、精神融合を試みるがなんと心が入れ替わってしまう。ナンバーワンとラ・アンは下層デッキのクルーが「エンタープライズ・ビンゴ」という遊びをやっていることを知り自分たちも始めるが… という感じの今回はコメディ回。

とにかく今回はこれまでと比較にならないくらい英語が難しい。セリフ自体も多いし、バルカンの言い回しも出てくる上に同時に3~4個のエピソードが進行するのでとにかく理解するのが難しい。「エンタープライズ・ビンゴ」がどういう遊びなのかも結局よくわからず。 どうやらチャペルはスポックに惹かれている模様。

ちなみにチャペルを演じているのはオーストラリアの女優さんでJess Bushさん30歳。 ティプリンクを演じているのはカナダ人(?)のGia Sandhuさん。めっちゃ細い。

さて今回の「Spock Amok」というタイトルだが、Amokには「狂乱する・取り乱す」「困惑する」などの意味があるので、直訳すると「スポック困惑」という感じになる。TOSに「Amok Time」というエピソードがあったがそれを踏まえたゴロ遊び的なタイトルで、さほどこのタイトルには意味はないし、もし邦題をつけるなら「エンタープライズ・ビンゴ」のほうがいいかもしれない。

 

第6話「Lift Us Where Suffering Cannot Reach」直訳すると「悲しみの届かぬ場所へ我らを導き給え」という感じだろうか。

惑星マジャリスを訪れたエンタープライズはこの星の重要人物の少年「ファースト・サーヴァント」の誘拐未遂事件に遭遇。少年とその父ガマル、国家元首でパイクの元恋人のエローラを救出するが、その後の調査で誘拐計画にガマル自身の関与が疑われる。誘拐が再度起こるものの少年を救出しマジャリスへ届けるが、そこでパイクはファースト・サーヴァントの真実を知ることになる。

今回は英語もさほど難しくなく理解しやすかったが、内容的には前回とは打って変わってシリアスで衝撃的な回。ぶっちゃけファースト・サーヴァントはマジャリスの平和を保つための一種の生贄なのだが、これはもろにル・グィンの傑作短編「オメラスから歩み去る人々」(「風の十二方位」に収録)を連想させる内容で、あの作品のパラフレーズだともいえるだろう。

観た後すごく後味が悪い回だが、未知の文化に触れるということはこういうことなのだろうか。ちなみに第2話以来全く出番のなかったサム・カークが久々に、しかし全くのチョイ役で登場。いつか彼が活躍する事あるのかなあ。

伴名練 なめらかな世界と、その敵

2019年だったかに単行本が出て話題になった日本SFの新星による6作収録の短編集。今回文庫化されていたので購入して読んでみた。

作者は1988年生まれだから私より一世代下。まず巻頭に置かれた表題作「なめらかな世界と、その敵」の冒頭でその異常で錯綜した内容に衝撃を受ける。これは一種の前衛文学なのかと思いながら読み進めると、主人公たちの世界が多元世界を行き来するのが当たり前の世界だということが分かってくる仕掛けだ。非常に興味深い作品だが、「Seamless」を「なめらかな」と表現するのはちょっと違うかなと思う。「なめらかな社会とその敵」という名著があって、この作品のタイトルをタイトルをそれに寄せたかったのだろうか。

伊藤計劃『ハーモニー』へのオマージュ作で、ナノマシンの技術で人格が変更してしまった天才少女と財閥の坊ちゃんの愛憎劇「美亜羽へ贈る拳銃」、抱擁した相手を「いい人」に変えてしまう恐るべき能力を持った女性にあてた彼女の妹の書いた書簡の形式をとるホーリーアイアンメイデン」、さらにAIに支配された世界を構築してしまったソヴィエトが世界の覇権を握りそうな時代を描いた「シンギュラリティ・ソヴィエト」と、この作家は基本的に認識や意識のコントロールをテーマにしているらしいがどれもプロットも文体も非常に練ってあってレベルが高い。

ラストに置かれた「ひかりよりも速く、ゆるやかに」はこの作品集中ではやや異色の作品だが、一番の傑作。これはある日主人公ハヤキの同級生たちが修学旅行中で乗車していた新幹線が突如停止する事故が起きるのだが、新幹線は時間の経過が低速化したものと判明する。この事件から起こる様々な社会的影響と、残された主人公たちの心情が見事に描きこまれて秀逸。他の作品はともかくこれだけはSFが苦手な人にも読んでほしい。

それにしてもこのカヴァーイラストはどうにかならなかったのだろうか。ラノベにしか見えないし、全く内容にもマッチしていない。売れ行き的にもこのカヴァーで相当損していると思う。文庫化でも全く変更がなく、いささか呆れたのだが。

シン・ウルトラマン

エヴァンゲリオン」の庵野秀明による話題の映画「シン・ウルトラマン」を観てきた。

日本に次々と禍威獣と呼称される巨大生物が出現、政府は禍威獣対策のための専任機関機関、禍威獣特設対策室、通称「禍特対カトクタイ」を組織してこれに対処していたが、ある日出現した禍威獣ネロンガに手を焼いていると突如宇宙から飛来した銀色の巨人がネロンガを倒してしまう。続いて出現したパゴラを倒したことでこの巨人ウルトラマンは人類の味方だと思われたのだが、外星人ザラブが出現、高度な科学技術の供与と引き換えにウルトラマンを抹殺するよう政府に交渉を持ちかける。

にせウルトラマンが登場、女性隊員が巨大化、ゼットンゾフィーの登場など随所でオリジナルのTVシリーズに出てきたエピソードをなぞりながらウルトラマンの物語を現代風にアップデートして見せている。禍威獣は生物ともロボットともつかないイメージでどれもどことなくエヴァンゲリオン使徒っぽい。戦いもCGで描かれて冷やっこい。

後半外星人メフィラスが現れ、ウルトラマンの力の源であるベータシステムを人類に供与すると言い出す。このシステムを使えば人類ひとりひとりをウルトラマンと同等の力の持ち主にできるのだ。ベータシステムの供与を防ぐために禍特対の面々とウルトラマンは奔走することになるのだが、これはなんだか今ネットでよく言われる日本の核武装論とよく似ている。でもザラブもメフィラスもベータシステムを持っているからこそウルトラマンと対等に戦えたわけで、いまさら人類が持つ持たんとか言う話ではなさそうな気がする。メフィラスとの戦いのあとゾーフィが現れ、人類がベータシステムを持つと危険だから太陽系ごと破壊すると言い出して最終兵器ゼットンを放つのだが、禍特対ウルトラマンはこれに対処できるのか、という話の流れになる。

ゼットンの弱点を見つけるためにウルトラマン禍特対のメンバーにベータシステムの基礎になるデータを開示し、これを世界中の英知を集めて解析するのだが、これはベータシステムのデータが世界中に流出したのでは?そもそもゾーフィの干渉をはねのけるためにメフィラスが言うようにベータシステムが必要だったのでは?ゾーフィの言うとおりここでゼットンを排除できても今後次々に外星人が人類を襲うのではないのか?

そしてベータシステムを得た人類はどう変容するのか。そのへんもなにもわからない、示唆もしないまま、ウルトラマンは力を失ったと思えるラストで終演。

この春からのロシアのウクライナ侵略を根拠に日本も核武装すべき、という声はよく聞く。この映画の製作中はまだロシアの暴挙は起こっていなかったのだが、日本の核武装論を下敷きにしたシナリオであることは明白で、でもこの映画、では日本はどうするべきなのかという態度がはっきりしないなあと、まあ映画でそんな微妙な政治的なことをはっきり言うわけにもいかんのかなあと、そんなことを思った

Star Trek : Strange New Worlds 第4話

第4話。Memento Moriメメント・モリ

エアフィルターを届けるためにフィニバス3という惑星を訪れたエンタープライズ。しかし惑星は何者かの攻撃を受けていた。生存者を救出するが、ラ・アンはモンスターに襲われたという生存者の少女の証言から襲って来たのはゴーンだと気づくがその直後に攻撃を受けナンバーワンが負傷してしまう。ゴーンの艦隊に襲われ絶体絶命のピンチに陥るエンタープライズだが...

今回は異星人の敵との闘いを描いた戦闘アクション巨編。ドンパチメインという、あまりこれまでのスタートレックにはなかったパターンの話。 ゴーンって「宇宙大作戦TOS)」に出てきた爬虫類みたいな宇宙人で、あれは見るとかなりクオリティの低い着ぐるみだったと思う。その後「エンタープライズ(ENT)」にも登場してその時は恐竜っぽいCGだったんだけど、今回は個体としては実際の映像には登場せず残念。そのかわり新規デザインのゴーン艦が登場、なかなか斬新なデザインだ。

ゴーンの攻撃で艦内は大混乱に陥り、医療システムがダウンして負傷したナンバーワンの治療に針と糸で傷口を縫うことになったり、エアフィルターの調整中だったヘマーとウフーラが悪戦苦闘したりするのだが、今回の主役はラ・アンで、ゴーンに襲われ家族を亡くしたという彼女の過去が語られる。

それにしても、回を追うごとに英語が難しくなってるように思うのは私だけ?初見では大まかなストーリーはわかったけど細かい部分の意味がほとんどわからず、後でスマホの翻訳アプリを使ってあーそう言う意味かみたいな。三回くらい見ないと映像まで目が回らない。

ジャック・ヴァンス 「冒険の惑星」四部作

ジャック・ヴァンスの「冒険の惑星」4部作を読んだ。

これは原題では「Planet of Adventure」という、ヴァンスの作品としては珍しい書下ろしシリーズとして1968年から1970年にかけて出版されたもので、日本では主人公の名をとって「アダム・リース」シリーズとも呼ばれている。原題ではそれぞれの作品に「City of The Chasch」「Servents of the Wankh」「The Dirdir」「The Pnume」というタイトルがついている。日本では創元SF文庫から「冒険の惑星I~IV」のタイトルで出て、その後それぞれに「偵察艇不時着!」「キャス王の陰謀」「ガラスの箱を打ち砕け!」「プニュームの地下迷宮」という邦題がついて再発されていてとても紛らわしい事になっている。

ヴァンスの作品なら当然ともいえるのかもしれないが、とにかくこのチャイという惑星に住む人々の文化や風習などが見事に描かれている事がすごい。たくさんの星を行ったり来たりした「魔王子」シリーズよりもこちらは一つの惑星を4作かけて描いている分その濃密さは強烈。チャイにはチャッシュ、ワンク、ディルディル、プニュームというもともと異星人の種族と、ディルディルによって何千年も前に地球から連れてこられてこの星に同化した人々がいるのだが、もともと地球人の人々もそれぞれの土地で異星人たちの影響を受けながら独自の文化を形作っている。訳語で「ディルディル人」などと語尾に「人」がつくのは人間で、「ディルディル人」なら異星人であるディルディルに何世代にもわたって使役され、そのためディルディルの価値観を持った人間ということになる。

初めのほうに登場する紋章人という部族は紋章を受け継いだり奪ったりしてそれがアイデンティティになるし、ワンクという種族は音楽で会話をする。プニュームの巨大な地下の迷宮都市に住む無気力な人々など、それぞれの部族の慣習や風物が見事に描かれていて極めてリアル。地名も相当数登場してきて、巻頭に地図が掲げてあるがそれに書かれていない地名も多数登場する。詳しい地図ないのかな。そんな世界で主人公アダム・リースは宇宙船を再建して地球へ帰るために、紋章人トラズと脱走ディルディル人アナコと三人でチャイ中をさまようことになる。

第4巻ではプニューム人の女の子ザップ210と一緒に旅をすることになるが、最初は無気力で味気ない女の子だった彼女が、それまで見たこともなかった外の世界に触れて徐々に魅力的になっていくのがよく描きこまれている。その一方で第1巻でヒロインと思われたイリン・イランを第2巻の中ほどであっさり退場させたりと薄情ヴァンスぶりも冴えわたる。

ラストも完成した宇宙船でチャイを去るところであっさり終わり。

やっぱりヴァンス、外れなし。これにしても「魔王子」にしてもNetflixあたりで連続ドラマにしたら絶対面白いと思うんだけどな。