Eurovision Asiaというイベントが今年11月にタイのバンコクで行われるのを皆さんご存じだろうか。
これは正式名称がEurovision Song Contest Asia 2026といい、ヨーロッパで75年の歴史を持つ歌の国別対抗戦Eurovisionのアジア版で、今回初開催となる。残念ながら日本、中国、インドといったアジアの大国がいずれも出場していないので国内での注目度は低い。今回は東アジアを中心に11ヵ国が参加、現在各国の予選が順次行われていて、17日のカンボジアを残すのみとなった。
最初に代表が決まったのがブータン。5組の候補から選ばれたのはNyendraという男性歌手の「Lhayi Semo」という曲で、これがいかにも素朴な作品だったので、うーんアジアこんな感じなのかなと思いきや、次に予選の行われたフィリピンはかなりレベル高く、代表に選ばれた19歳のシンガーCarmelle「Sobra Sobra」には度肝を抜かれた。とんでもない才能の持ち主で、ダンスチューンからジャズやバラードまで見事に歌いこなす逸材だ。
その後韓国はK-POPグループA.C.EのメンバーJUNHEE「DEEP DIVE」がいかにもユーロヴィジョンらしいパフォーマンスで選ばれたが、韓国はどうも国を挙げての参戦という感じではないみたいで予選参加の他の9組も意外とレベルが低く、イマイチ盛り上がりがなかったような。
ラオスは代表歌手Thinlaが先に決まっていて3曲の中から本戦で歌う曲を選ぶというシステム。で決まったのがこの曲「Bae(べ)」。ご覧の通りティンラちゃんとてもかわいい。でもやっぱCarmelleみたいな破壊力はない。
タイも10組の歌手が参加して予選が行われたのだが、事前に曲を発表しないというやり方。ところが始まってみたらこれがパッとしない曲ばかりで残念な内容。結果MANG+DAOUという男女デュオが歌う「AROMA」が選ばれたのだが、なんか今まで決まった中で1番平凡なような。パフォーマンスもなんかメロドラマ臭くて安っぽいし...
8月にマレーシア代表として発表されていたAina Abdulの参加曲「Bluest Sky」がようやく先日発表された。もともとこの人は素晴らしい実力のある歌手なので期待していたのだが、これは期待に違わぬ素晴らしい曲で今大会の大本命。イスラム教徒の彼女は手や足はおろか髪の毛も決して出さないファッションがわれわれの目には異様に見えるが、それを逆手に取った奇抜なファッションと、静かだが強烈な歌唱力と表現力で胸を打つ。彼女はシンガーソングライターで、英語の歌詞のこの曲も彼女自身の作詞・作曲というのも素晴らしい。
前述のフィリピンのCarmelleとこのAina Abdulのどちらかが優勝だろうと私は思うのだが、海外の反応ではベトナムのTóc Tiênの「Em Tiên」がこの二人に迫る勢い。この人はアジアのLady GAGA的な位置付けの方で、エンターティナーとして非常に高いレベルにある歌手だ。ただ私はこの曲が正直あまりにもベトナム的なものを前に出しすぎている気がして好きじゃないんだけど、ダンスなどを含めてエンタメとしての完成度は高く、確かに高く評価されるのは理解できる。
他の国ではバングラデシュは6人組アカペラグループBeatmosphere「Tumi Ele」が選出された。アカペラというのは個性的で面白いし曲も悪くないのだが、パフォーマンス的には制約が多くEurovision的には苦戦必至。
ネパールはPratik Himal Rai「Antana Maya」が選出されたがこれは正直事前に聞いても全く印象に残らなかった曲で、どうしてそうなったというのが素直な感想だ。この国の予選参加曲ではBeyondの「Control」という曲が圧倒的に良かったし、実際発表になった時のYoutubeのチャットでも「なんでBeyondじゃないの?」という声ばかりだった。Pratik Himal Raiのパフォーマンスは(彼が阿部サダヲにしか見えないという事は置いといても)他の参加者に比べても特に秀でていた印象がなくて、なぜ彼が選ばれたのか全く理解できない。
さらに問題なのは先日決定したモンゴルのBeck「Light」という曲。これが発表された翌日に、実はこの曲が2018年にリリースされた旧作だったことが発覚。Eurovisionでは参加曲は未発表の新曲に限るという規定があり、盗作疑惑なども厳しくチェックされるのに堂々と旧作を出してくるとは呆れる。しかもそれまでアップされてた動画を削除しているなど結構悪質。Eurovision本体の規定がこちらでも適用されるのかどうかはわからないが失格が妥当だと思う。とはいえただでさえ出場国が少ないので、せめて別の曲で出るとかになるのかも。
17日に予選が行われるカンボジアは7組が出場するのだが、予選のステージまで出場曲を紹介しない方針らしく、これはよくない。事前に曲が聴けないので、以前リリースされた曲だったり盗作だったりする場合のチェックが効かない。この辺は改めてほしい。
あと配信映像が乱れたり音が非常に悪かったりとか様々な技術的な問題も。国によっては司会が母国語だけで話して全く英語を話してくれなくて何を話しているのかさっぱりだったりもするし、最近までは独立して設けられていたYoutubeのチャンネルがいつの間にかなくなって本家Eurovisionのチャンネルと統合されてしまっていたり運営も試行錯誤しているようだ。
☆10/18追記
モンゴルの代表曲「Light」については失格となり、かわりに「Chamguigeer (Without You)」という曲に変更になった。
17日のカンボジア予選の結果Monetreyの「I Let You Go」が選ばれた。悪い曲ではないが平凡な曲でAina AbdulとCarmelleに対抗できるとは到底思えない。