水谷周 現代アラブ混迷史

イスラエルハマスの戦闘はどんどん泥沼化していくばかり。毎日パレスチナ情勢のニュース見ては「いい加減にしろよイスラエル」と憤るのだが、イスラエルとアラブの対立の歴史についてちゃんと知っておきたいなと思い古本でこの本を見つけて読んでみた。

だが、これはイスラムについての本でイスラエルとの関係についてはほとんど書いてない。 この本を読んでわかったことはイスラム教というのがもともと政治にも発言力が強い、というか政教一体の宗教であるということ、そのため政教分離という民主主義では当然のことができず、昔の教王(カリフ)制の影響なのか独裁に拒否感がないということだ。

近代イスラム国家の歴史は独裁者の歴史だ。 イスラム各国の独裁者が紹介されているが、まるで独裁者の見本市だ。そうなったのももとをただせば第1次大戦後のオスマン・トルコの解体とカリフ制の廃止、そして英国の二枚舌外交によるイスラエルの建国といった様々な歴史的な失策があったからだと言える(もっともそれを言うならさらにずっと遡ってローマ帝国一神教キリスト教を認めてしまったことが今に続く対立の根底にあるとも言える。キリスト教が欧州世界を飲み込む一大勢力にならなければイスラム教自体発生しなかったと思えるからである)。

この本ではイスラムユダヤの対立についてではなく、イスラムという文化をどう捉えるべきなのか、イスラム各国に民主主義は根付くのか、という事を論じてある。まあ新書なので内容は薄い。書かれた当時と今では社会情勢も全く違う。このころ(2011年ごろ)はまだISもなかったわけだし。

というわけで、イスラム各国の独裁者列伝としては面白かったが他はあまり参考にならなかったかな。