塩野七生 ローマ人への20の質問

BOOKOFFで100円だったので何の気なしに買った新書本。新書というと結構いい加減な本も多いのだが、これは「ローマ人の物語」という大著が有名な塩野七生氏がローマ帝国について対話形式でわかりやすく解説した本で、めっちゃ面白かった。

ローマ人の物語」は全く読んでないし、私のローマ時代についての知識といえば「ベン・ハー」や「スパルタカス」「グラディエーター」といった映画やドラマ「ROME」を見たくらいのものだったのだが、これを読んだらローマ帝国というのが理想の社会に近いことに驚かされた。

ローマ帝国というと周辺の国を次々に侵略し、敵国の人々を奴隷として使役しコロッセオで残酷なショーを楽しんだ野蛮な人々というイメージが強い。それは決して間違ってはいないのだが、実はローマ帝国は野蛮なだけな社会ではないのだ。

2000年も前の社会で女性の権利が、参政権こそなかったものの財産権を認められていたとか、武力で併合した敵国の文化を尊重したとか、驚くことばかりだ。ローマ帝国は併合した国の神を自らの神殿に加えていった。キリスト教以前のローマ帝国の時代の宗教は柔軟な多神教で、だれが何を信じようと自由だったのだ。だからこの時代には宗教紛争などなかった。このころ世界にあった一神教ユダヤ教というローカル宗教だけだったが、その後キリスト教イスラム教が派生した。これらはいずれも一神教で、自分たちの神以外を信仰することを許さない。一神教が人類に広まってしまったことが現代の人類の不幸の元凶になったのだと言えなくもない。もしローマ帝国が続いていて一神教を受け入れなかったら、今世界を揺るがす宗教対立もなかったかもしれない。人類はなぜ2000年前よりも不寛容になってしまったのだろう。

現代人としてとても悲しく情けなくなってしまう。ローマ時代の寛容で自由な社会こそが人類の到達すべき理想社会だったのかもしれない。「ローマ人の物語」読みたくなった。