小川一水 天冥の標Ⅳ 機械じかけの子息たち

第3巻で救世群によるドロテア・ワット強奪未遂事件の数年後。救世群の青年キリアンが意識を取り戻すといきなり全裸のアウローラという少女に出会いそのまま関係を持つ。そのあとも記憶を失ってはアウローラと出会い関係を持つ事を繰り返す。アウローラは「恋人たち(ラヴァーズ)」と呼ばれる人工生命体「蛋白機械(プロトボット)」で、セックスによって人間に奉仕するという使命を与えらえていた。アウローラはキリアン専用に作られた個体で、キリアンとのセックスによって「混爾(マージ)」と呼ばれる至高の境地に至る使命を与えられていたのだった。しかし物語が進むにつれ「恋人たち」と「救世群」の思惑と、そこに実質的に太陽系を支配しているロイズ非分極保険社団の介入で二人の性愛の行方は意外な方向へ…

というわけで第4作はまさかのエロ小説! いやいやたまげた!作中で一体何回ヤルんだよ!濃密な描写が続くが、あまり不快に思わないのは作中セックスに励むのはキリアンとアウローラのカップルにほとんど限定されているからかな。それでいてちゃんとSFとして筋は通ってる。 まあいわばセックスが宗教みたいになっちゃってる社会を描くとしたらこんな事になるのかな。考えてみればこういう社会を描こうとしたらSFでなければできないかもしれない。 しかしこの連作の振り幅の大きさには恐れ入る。

後半、実はキリアンは事故で瀕死の状態で救出され、治療困難となり「恋人たち」と同じ「蛋白機械(プロトボット)」の体をに意識を移されていることが判明する。ん?そしたら救世群も全員プロトボットになっちゃえば冥王斑の保菌者でなくなるのでは?