ジャック・キャンベル 彷徨える艦隊シリーズ1-3巻

状態良いし面白くなかったらメルカリで売ろうくらいの気持ちで買ってきたんだが、読んだら結構面白い。

いわゆるスペオペなんだけど、この世界の宇宙艦隊は超光速で航行する技術を持たず、恒星系のジャンプ点と言うところから亜空間回廊を経由してしか恒星間航行ができない。通信も光速以上ではできない。通常空間での艦の速度はめいっぱいの最大で0.2光速くらい。艦隊は数十隻から百数十隻の規模が数光分の単位で散らばるという相当な規模の大きなもので、戦闘は相当な距離スパンで行われる。ジャンプ点は星系の外側(太陽系なら海王星軌道のずっと外)にあるのでジャンプ点から艦隊が出現しても惑星の住民は数時間後にしかそれを観測できない。というわけでかなり制約が大きい点が面白い。

宇宙に拡大した人類社会はアライアンス(星系同盟)とシンディック(惑星連合)の二つの陣営に分かれてすでに百年以上戦争が続いている。そんな世界で、100年の冷凍睡眠から覚めたギアリー大佐だったが、100年続いた戦争の間に戦術は後退し、ギアリーは艦隊を救った英雄とされていた。100年の間に人類はジャンプ点からの超光速航法以外の技術ハイパーゲートを導入していて、要するにジャンプ点ネットワークが各駅停車でハイパーゲートが新幹線だと考えるといいのだが、ハイパーゲートが設置されなかった星系は寂れてしまっているとかの設定も面白い。敵のハイパーゲートのキーを得たアライアンス艦隊は敵地に乗り込んだが、罠にかかって壊滅。残存艦艇を指揮することになったギアリーだったが、100年の間消耗戦を続けた結果、敵方も味方も戦術という概念が消滅してしまっていて、ただただ突撃を繰り返す味方に一から戦術を教え込まないといけなかった、というお話。

で、ギアリーは敵の裏をかいて様々な星系に立ち寄りながら巧みな戦術で敵の艦隊をつぶしていく。味方同士の不協和音や深謀遠慮、補給などの問題、さらには艦隊内部の人間関係もしっかり描いてなかなかリアル。帆船時代の海戦ものの宇宙移植版と見ることもできる。宇宙艦隊に「空母」という概念がないのも考えてみれば当然。敵側を全く描かない事と、異星人の影がちらつくのもうまい。

面白いけどめっちゃ続きが長いんですけど!6巻で一応の決着がつくらしいけどそこまでは読まなきゃ?