ユヴァル・ノア・ハラリ 21Lessons

ベストセラーとなった「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の著者で、イスラエル歴史学者・哲学者の著者が、現代人と現代社会の直面する問題について、どのように思考し行動すべきかを語った著作。原著は2018年出版。本文だけで500ページの大著だが大変興味深く読んだ。

彼が取り上げるのはまずテクノロジーの問題。現代は加速的なテクノロジーの発達で数十年前には予想もできなかった変化に見舞われている。AIの発達で仕事がなくなり、人間は存在価値を奪われるというのだ。ビッグデータと繋がったネットサービスが人々の嗜好すらコントロールしていくかもしれないという未来像はなかなかのディストピアだが、もうすでにそんな時代はそこまで来ているかもしれない。

これを皮切りに政治、宗教、戦争やテロなど様々な問題について彼一流の解釈で語っていくのだが、例えば昔の人々は支配する者が変わっても、農民なら畑を耕し作物を育て収穫して、職人なら仕事を覚えて、という生活には変化はなかった。なので子供達にはその生活についての方法を伝授すればよかったのだが、現代では今日子供たちに教えたことが明日は時代遅れになってしまう。教育というものの根幹が揺らいでいるのだ。とか、グローバルな時代には宗教は意味をなさなくなってくるとか、ちょっと驚いてしまうような、でもちょっと考えると納得いくような、そんな発想を大量に含んで大変示唆に富む一冊だ。

ところで昨日(2022年2月24日)ロシアがウクライナに侵攻した。これはとんでもない暴挙で、下手をすると第三次世界大戦に繋がりかねない重要事件だと思う。米国やEUの出方次第では中国の台湾進攻にも繋がりかねないとも思う。この事案について第11章「戦争」で「プーチンは21世紀には軍事力があまり役に立たないことや、戦争を仕掛けて勝つには限定戦争を行うにとどめておなかなくてはならないことを知っているように見える」と述べている。さらに重要なこととして、「プーチンのロシアは普遍的なイデオロギーを欠いている」として「ウクライナへの侵攻は(中略)例外的な出来事であることを願っても、そこそこ妥当だろう」と楽観視している。要するに全面戦争にはつながらないだろうと言うわけだが、そうあることを願わざるを得ない状況になってしまった。どうかウクライナがこれ以上ひどいことになりませんように…