スティーブン・ウェッブ 広い宇宙に地球人しか見当たらない50の理由

最近話題の中国SF「三体」でも取り上げられた、なぜ宇宙人は見つからないのかという問題、いわゆる「フェルミパラドックス」について考察した本。
もし宇宙に進んだ異星人がいた場合、それが光速を超えるようなオーバーテクノロジーを持たなくても数万年程度のタイムスケールで銀河中に植民し繫栄しているはずで、なぜそんな異星人と我々は接触しないのか、というのがこのパラドックスの命題である。本書はこれに対する50の意見について考察したもの。冗談のようなものから人類の発生要件に至るまで様々な意見について考察していく。まあ結論としては、宇宙で文明を築いているのは地球人だけじゃないのではないかというところに落ち着く。
私も以前から地球の生命の繁栄には月による潮汐などの影響が必要だと思われるし、他にも偶然の影響が大きく、したがって地球での生命の繁栄は実はかなりレアな事象なのではないかとは思っていたのだが、ここまで突きつけられるとうーんという感じ。
 
でも私は宇宙で我々だけが文明を持っているとは思わない。ここで検証されているのはあくまで地球と同じスタイルの生物による文明についてであり、地球とは全く違う進化を遂げた生物の文明だってありうると思う。地球と同じような偶然に見舞われなくても生命が文明までに発展する可能性はあるし、例えば19世紀にウィリアム・モリスが考えていたような共産主義ユートピアが実現した世界のように、文化的にかなり進んだ文明でも科学的な発展とつながらないということもありうる。
また、もし何万年も進んだ文明があるなら、それは普通に考えれば、人類と関わろうとしないだろうと思う。
書かれている科学の知識がやや古いので、現在は赤色矮星の惑星系が続々と発見されていて、銀河系にありうる惑星の数は飛躍的に増えていることも考えなくてはいけないと思う。
最初の方でダイソン球はこもった熱を赤外線として出しているはずと断じているのもおかしな話で、ダイソン球を作るような文明なら余熱の再利用もきっちりやるはず。無駄に放出したりするだろうか。
というわけでSFファン、宇宙ファンにはかなり刺激的な一冊。ぜひご一読を。