ウェブスター あしながおじさん

実はこの作品、子供の頃から一度読みたかったのだが、何しろ生まれてこの方ずっと男の子だったもので、代表的な少女小説とされるこの作品にはなかなか手が出なかったのだった。まあ今も男子(というかおっさんorジジイ)なのだが、それはそれ。というわけで読んでみた。
孤児院育ちのジルーシャは作文の才能が認められ、ある匿名の紳士の後援を受けて大学へと進む。彼女を後援する条件は、毎月後援者に手紙を書くこと。ジルーシャはジュディと名乗り、一度だけ垣間見た匿名の後援者を「あしながおじさん」と呼んで手紙を書く。これはほとんどその手紙だけで構成された「書簡小説」だ。
ジュディの明るいキャラで楽しくストレスなく読めて、今にも繋がる女性問題についても考えさせられられる作品だ。100年前のアメリカの女子教育について克明に描かれた資料的な価値もあると思う。ただ作家として自立することにこだわっていたはずのジュディが結局は結婚というステレオタイプな女性の幸福に収まってしまうのはこの時代の女性小説の限界だったのだろうか。
著者ジーン・ウェブスターマーク・トウェインの遠縁だそうで、才気煥発なジュディは彼女そのものだったのだろう。この作品にも窺えるが、この作家が女性の地位向上を望んでいたことは間違いないし、孤児院に対する福祉の充実にも心を砕く素晴らしい女性だったらしいが、出産後の産褥熱で若くして亡くなっているのはとても皮肉で残念なことだ。
 
気になった文章。
「あのねえ、おじ様、私は誰にとっても最も必要な要素は想像力だと思いますのよ。...(中略)...ところがジョン・グリア孤児院ではちょっとでも想像力のひらめきが現れるとすぐに踏み消してしまうのでした。あそこで奨励するのは義務だけでした。」
どこかの国の学校のシステムを批判しているように思えて仕方がない。
 
現在様々な翻訳が出ているようだが、私が読んだのは新潮文庫の旧版、松本恵子訳。この翻訳は100年前の書簡の雰囲気が出ててとてもいいと思うだが、一箇所だけおかしいと思ったのが、ジュディが買い物に出て「これまでは白銅しか持ったことがなかった」というところ。これは5セント硬貨を表す「ニッケル」のことだと思う。
もうひとつ気づいたのは、「キャンディ・キャンディ」ってこれのまるパクリだったのだということ。あの作品ってこれにいろいろ話を盛っただけだったのだ。