ミッドナイト・スカイ

リリー・ブルックスダルトンの小説「世界の終りの天文台」を原作にNETFLIXで公開されたジョージ・クルーニー主演・監督による新作映画。

おそらくは核戦争で滅亡の淵に立たされた人類。刻々と放射能汚染が迫る中、科学者オーガスティンは取り残された謎の少女アイリスと二人だけで北極圏の天文台に残っていた。帰還途中の木星探査船アイテルに警告するため通信を試みようとするが、サリーたちが乗り組むアイテルのほうもトラブルを抱えていて…といった物語。

全体には絵的にも音的にもすごく静かな、抑制のきいた映画で、SF映画と聞いて一般の人たちが期待するような派手さは皆無。個人的には好きなタイプの作品。とは言え、まあSF映画ってどうしてもおかしな点がある。この作品でSF的におかしい点をまず挙げると、なんと言っても第1に探査船が訪れた木星の衛星K-23。木星の衛星なのに地球と似た環境があって人類の生息に適しているという点がまずおかしい。内惑星に比べ日射量も少ないし、木星の巨大な潮汐力を受けながら地球と似た環境を保持できるとは思えない。そこは目をつぶって、もしそんな星があったなら、とっくに発見されて話題になってるし、その星の名前だってすぐに何か普通の名前がついてK-23なんて符号で呼ばれているわけがない。

第2には探査船アイテルでの事故。デブリとの衝突が起こったら、少なくとも秒速数十キロでの衝突になるはずで、どんな微細なデブリが当たったとしてもマヤは即死のはずだ。またこういう事故が時折でも起こるようなら宇宙船はそういうデブリとの衝突を想定した作りになっているはずだと思う。

第3はアイテルは地球への帰還をあきらめ、地球でスイングバイをして木星へ戻ることにするが、乗組員のうち二人はシャトルで地球へ帰還する。スイングバイしようとしている宇宙船は相当なスピードなはずで、そこからシャトルで地球へ戻るというのはかなり無理があると思う。

それとSFではない部分だが、北極圏の厳寒の中海に落ちたら即凍死だと思うのだが…(きっと防寒用の服がウエットスーツみたいな作りだったのだと思う)

そういうアレレな点を別にしたら物語自体もゆっくりしたペースもかなり好きな映画だった。抑制のきいた音の使い方もいい。アイリスが現実にいたのか、それともオーガスティンのみた幻影なのかとか、人類滅亡の原因とかを気にする人が多いと思うが、それは些末な事だと思う。

インターステラー」プラス「渚にて」という風に言われてもいるが、まあ確かにその二つには似てるかな。ラストは少しだけ希望を残してエンド。あまりごちゃごちゃ言わずにゆっくり滅びを楽しんで観るべし。