最近読んだ本

随分放置してしまったのでそろそろなんか書かないと生存を疑われそうなので。最近読んだ本まとめて簡単に書きます。

レオ・ペルッツ「テュルリュパン

これは実は9月くらいに読んだ本。チェコの作家レオ・ペルッツの作品。17世紀、革命の150年前のフランスを舞台に、のちにフランス革命が起こった時と同じような状況が発生していたが、自分が貴族の落とし子だと信じる床屋の雇われ職人テュルリュパンは、貴族勢力の一掃を目指すリシュリュー枢機卿の陰謀に巻き込まれていく。というペルッツらしい歴史フィクション。 史実にフィクションを埋め込んで緻密に物語が進んで行くのは「第三の魔弾」同様見事で非常に面白い。フランスの歴史を勉強して読んだ方がもっと楽しめるかなとは思うけど。

ルシア・ベルリン「掃除婦のための手引き書」

著者の波乱万丈の人生を活写した短編集。ルシア・ベルリンは様々な職業を転々としながら短編小説を書いた作家で、ここに収められた作品も一作を除いていわば私小説なのだが、どれも短編小説として見事な切れ味の作品ばかりで強烈な印象が残る。喉に何か詰まってしまいそうな表題作も素晴らしいが、作集中唯一私小説ではない「さあ土曜日だ」が素晴らしい。ほかの作品もいずれもレベルの高い作品揃い。これはすごい。ぜひ読んでください。最近第2作品集も出版されたみたい。そちらも読んでみたい。

ただし著者の名前はアメリカ人なのだからベルリンではなくてバーリンだと思う。

横溝正史「幽霊座」

横溝の中短編3作を収めた短編集。歌舞伎座を舞台に起こった殺人事件と17年前の謎の失踪事件が複雑に絡み合う表題作、ストリッパーが自宅で殺されてテーブルに生首が置かれるという事件が起こる「トランプ台上の首」など収録。横溝というと「犬神家の一族」「八ッ墓村」「悪魔の手毬歌」のような、古い日本の因習にとらわれた人々が登場する独特のミステリというイメージがあるが、これは結構モダンな内容で英米のミステリの影響が見え隠れして面白かった。