ブライアン・グルーリー 湖は餓えて煙る

面白くなかったらメルカリで売ろうと思ってBOOKOFFで100円で購入。

1998年2月。ミシガン州スタベイション・レイクという田舎町で地元紙の新聞記者として働くガスには、地元アイスホッケーチームのキーパーだった少年時代に痛恨のミスを犯して決勝戦に敗れたという過去があった。当時チームのコーチだったブラックバーンはその後事故でスノーモービルごと湖に沈み死亡したとされていた。 ある日彼が沈んだと言われていた湖と隣接する他の湖からブラックバーンのものと思われるスノーモービルが発見されて過去の事件が動き出す。

オビの煽り文句にもあるように新聞記者もの、スポーツものとして、ある種の青春小説としての複合的な面白さで、かなり長い(550ページくらいある)けどぐいぐい読ませる傑作。正直ミステリとしてはそんなにびっくりするような仕掛けがあるわけでもないのだが、現在日本でも問題になることが多いスポーツ指導者によるハラスメントの問題も盛り込み、閉鎖的な田舎町を舞台に非常に登場人物が多い中を筋が通ったストーリー展開で、ミステリというよりも現代小説として非常に面白かった。 1990年代末といういう設定(クリントン大統領の不倫問題が作中で話題になっている)でインターネットはまだダイヤルアップ時代で未発達、携帯電話もまだ普及していないということを考えて読まないといけないが、ガスと部下のジョーニーがジャーナリストとしての理想と現実に揺れる様や、迫力あるアイスホッケーの試合のシーンなど見どころが多い。

残念なのはこの邦題。「湖は餓えて煙る」ってホラー小説かよ。ちなみに原題は極めてシンプルにこの作品の舞台である町の名前で、その近郊の湖の名前でもある「Starvation Lake」。どうしてこんな邦題になっちゃうのか。ミステリのタイトルって洋の東西を問わずこんな感じでおどろおどろしく、それでいてなんだか説明的な「〇〇は〇〇で〇〇」みたいなのがすごく多いような気がするが、この品のないタイトルですごく損をしてるのではないだろうか。

続編「The Hanging Tree」が米国では出ているらしいが未訳。うーん読みたいんですけど...