ヨハン・テオリン 冬の灯台が語るとき

最近流行してるらしい北欧ミステリ。ヨハン・テオリンはスウェーデンの作家。1963年生まれだから私と同じ歳。これは2009年に出た作者の第2作だそうで、ということは結構遅いデビューだったということになる。以下作品の重要な部分についてネタバレがあるので注意。

スウェーデン南部のエーランド島。ウナギ岬の古い家を買い取って住みはじめた教師ヨアキム。ある日警察から娘のリディアが溺れたという事故の知らせを受け慌てて帰ってみると、死んだのは娘ではなく妻のカトリンだった。誤った情報をヨアキムに知らせてしまった警官ティルダは、カトリンの死について特に確証はないのだが疑問を抱く。 ヨアキムは子供たちとウナギ岬屋敷で暮らすことになるが、この古い屋敷には亡霊たちの気配がつきまとう。 一方内装業者のヘンリクはごろつきのセレリウス兄弟に空き巣狙いの片棒を担がされていた...

いや、これは面白かった! 推理小説としてはそんなに凝った仕掛けはないけれど、それよりも登場人物の心理に重点が置かれた小説と言っていい。先日読んだ「湖は餓えて煙る」もそうだったけど、最近はこういうミステリの謎解きよりも登場人物の心理に重点を置いた、やや文学的な切り口の作品が多いのかな?

屋敷の昔話がカトリンの母ミルヤの視点で書かれたものが所々に置かれ陰鬱な空気が漂ってくるのがヨアキム一家を襲う心霊現象(?)を盛り上げていく仕掛けもいい。そしてそれが最後にひっくりかえされてしまう(ミルヤの視点で書かれた部分がほとんど彼女の創作だと思われることが明かされる)のも見事で、事件そのものは現実的な解決に至るのに、説明がつかない超自然的なものがかすかに残るバランスがすごく良い。

ただ以前も書いたけどハヤカワさん、この邦題はどうなのよ? 灯台ほとんど話に関係ないでしょ。 原題は「Nattfåk」。「夜のブリザード」の意味だそうで、これが四季の4部作の冬編だというのを考えても「冬の嵐」とかのシンプルな題の方がいいと思うんだけどな。ともあれ他の作品も読みたいな。こっちは4作とも邦訳が出ている。