小川一水 天冥の標Ⅰ メニー・メニー・シープ

これは全10巻17冊という大長編SFの第1巻。上下2冊。

西暦2803年。入植300周年を迎える惑星ハーブCの植民地メニー・メニー・シープ。東西70km、南北40kmの島国だ。化石燃料がないこの星では、300年前に住民を地球から連れてきたが事故で墜落した移民船シェパード号の、地下に埋もれたが機能し続けている発電機だけが頼りだ。しかし臨時総督は厳しい配電制限を実施、各都市では市民生活に支障が出だすほどだった。臨時総督がシェパード号を再起動し住民を残して去るのではないかと噂が立ち、総督側と反対派の対立が深まる中、セナーセー市で発生した疫病の流行に巻き込まれた医師カドム・セアキは異形の女性イサリと出会う。二人の運命を絡めながら、弾圧に反抗する人々との対立をメインに置いて、この植民地に住む様々な人々を描いていく。

カドムらは普通の人間だが、カドムの友人アクリラ・アウレーリアらセナーセー市に拠点を置く「酸素いらず(アンチョークス)」は充電しておけば呼吸しなくても生きられるという改造を人体に施した人々だし、この星の原住民で集合意識を持つという「石工(メイスン)」、娼館の従業員として開発された人造人間「恋人たち(ラヴァーズ)」と様々な陣営が登場する。

この第1巻では臨時総督ユレインとの対立が描かれ、最後はカドムたちが勝利するのだが、その瞬間イサリの同族「咀嚼者」たちが大挙して攻め入ってくるというところで終わる。謎が無数に残るし、カドムやアクリラなど登場人物の大半が死ぬ(というか死んだように思える)ので、今後謎や伏線をどうやって回収して、物語がどう繋がっていくのかすごく興味深い。続きを読むのが楽しみ。

でもあと15冊か…