小川一水 天冥の標Ⅷ ジャイアント・アーク

前巻から300年後。これまで6巻8冊をかけて語られてきた人類の歴史を経て、ついに第1巻の時間に戻った今巻は「PART1」「PART2」の2冊に分かれているのだが、それぞれが違う内容になっている。

「PART1」は第1巻「メニー・メニー・シープ」で起こった内容を別の視点から描いたもので、章立てと各章の副題も第1巻を踏襲していて、ただし各タイトルに(B)がつく。前提となる世界が不明なままだった第1巻の時点では不可能だったイサリ視点やラゴス視点からメニー・メニー・シープの「革命」が描かれる。イサリは300年冷凍睡眠させられていたことや、救世群から脱した理由などが語られる。第3章(B)ではラゴス視点での、第7巻の頃の時代のエピソードなども語られる。ただし各章で起こることは第1巻と同じではなく、第8章(B)の途中で第1巻で描かれた部分を消化してしまい、そこから先は8冊と300ページぶりに、ようやく物語が前に進みだすことになる。

「PART2」では第1巻のストーリーの続くが本格的に始まる。重傷を負いながらも蛋白機械の移植を受け生還したカドムはメニー・メニー・シープの真実を知り、イサリ、ラゴスらとともにメニー・メニー・シープの「天蓋」を目指す旅に出る。そこには「恋人たち」の宇宙船シェパード号があるはずなのだ。この巻ではこれとエランカを大統領に得た新政府と咀嚼者(救世群)たちとの戦いを並行して描いていく。

まだ救世群が何をやりたいのかがよくわからないのだが、要するに救世群は、何らかの意図でセレスの南半球にドロテアを埋め込んだのだ。その影響で北半球にある、メニー・メニー・シープは重力が増大したり、かなり大きな電力を引き出すことができたりしたわけだ。

…ん? 重力が増大?