スタニスワフ・レム 大失敗

入院4日目。やっと明日から本格的に治療に入ることになった。一体いつまで入院しないといけないのやら。
あまりにヒマなので本の他にもNetflixの動画とか大量にタブレットにダウンロードしてきたんだけど何だかすぐ読み/観終わっちゃいそう。

なんか重量級のやつも、と思って持ってきたポーランドのSF作家スタニスワフ・レムの最後の長編小説「大失敗」を2日で読了。

これ読むのは二回目なんだけど、前回とは全く違う印象になった。これはSFに見せかけて人類の愚かさを描いた恐ろしい作品だ。

書かれた当時は東西冷戦時代で、ちょうど米国のレーガン政権が「スターウォーズ計画」をぶち上げた頃。衛星でICBMを撃ち落とすというアレだ。この作品に登場するクウェンタ星はふたつの大国の対立からスターウォーズ計画同様の宇宙軍備がエスカレートしてどっちの陣営も身動きが取れないようになっている(らしい)。そこに地球人が現れてコンタクトを迫る。さてクウェンタ人はどう対応するのか。

レムは途方もない豊富な知識を持った作家だが、ここでは未来の「戦争」の態様について極めて深い考察が繰り広げられている。途中で考察にハマって話が脱線するのもレムらしいし、翻訳の硬さもあって彼の作品の中でも尋常ではない読みにくさだ。レムの熱心な読者以外には全く勧められないが、レムのファンなら(他の作品を一通り読んでから)必ず読んでほしい。

あとこの探検隊の母船エウリディケ号の帰還方法が超ウルトラC設定で驚く。レムのシリアスなSF作品にはワープなどという概念はない。「ソラリス」などではボカしてあったが、亜光速で宇宙旅行すると相対性理論に則り時間がズレるのだ。なのでクウェンタ星探査は地球時間で何百年もかかってしまう。そこでブラックホールの重力を使って時間を逆行させるという禁じ手を使おうとするのだ。それがうまくいったかまでは描かれないのだけど、レムとしてはこれまでにない斬新な設定だとは言える。

ところでレムコレクション第2期が秋から刊行スタートというニュースが。その後どうなってるのかな。国書刊行会様、情報待ってます。