ウォルター・テヴィス クイーンズ・ギャンビット

最近Netflixのドラマで世界的に話題になった作品だが、原作は1983年に出た作品。作者のウォルター・テヴィスはデヴィット・ボウイ主演で映画化された「地球に落ちてきた男」やポール・ニューマン主演で映画化された「ハスラー」の作家として有名。今回も映像化で注目された形で、この作品については今回初めて邦訳が出た。

読んだ感想としてはドラマがほとんど原作に忠実だったという事。ドラマ独自のアレンジは実母の死因がドラマでは無理心中だったのに対して、原作では本当にただの事故だったとか、パリのホテルにNYで出会った友人が訪ねてきて寝坊するくだりが原作にはないとか細かいことだけで、通常ありがちなドラマ独自の味付けはかなり少ない。

ドラマを見ていた時、最後の方でロシア遠征中のベスに電話がかかってきて、それを取り次ぐのが記者としてロシアにやってきたタウンズで、ベニーやハリーが一緒になってベスの手を考えているシーンがあったのだが、これはおかしいと思った。タウンズはともかく、ベニーとハリーはそれぞれ繋がりがない。いやないわけではないが、集まって一緒に考えるほどの仲間ではないだろう、と思ってたらやっぱり原作ではタウンズはロシアに来たりしないし、ベニーの仲間にハリーはいない。このラストに関してはドラマのほうが盛り上がるけど、小説のほうが現実的だと思う。

翻訳者が「あとがき」で、ドラマと一番の相違点は、原作ではベスが自分の平凡な容姿にコンプレックスを持っていることだと書いているが、そうだろうか。

ドラマでは、主演女優さんのアニャ・デイラー=ジョイが美人でファッションも素敵だったにも関わらず、その「容姿にコンプレックスを持ってる」感じは十分出ていた。というか自分の容姿にコンプレックスがあったからこそあれほどキレイでおしゃれになったと見えた。逆に小説版ではそういう要素はあまり感じなかったのだけど。

まあそんなこんなで、要するにドラマ観てたらこの小説、あんまり読まなくてもいいかな。