宮下奈都 羊と鋼の森

入院2日目。

これはピアノの調律師になった青年が主人公の成長物語。調律師という地味な職業について、おそらくは徹底的な取材をしたのであろう、非常に詳しく書かれていてすごく興味深く読んだし面白かった。しかしこれは小説としてはどうだろう?

1番に気になるのは主人公の青年外村にあまりにも個性がない事。単なる真面目青年で仕事以外に何か趣味があるようでもない。友人もいない。どんな家に住んでいるのかとかいった私生活の描写もないし、彼がどんな外見なのかも全く描写されない。そもそも名前も外村という名字しかなのだ。これは多分作者が意図してのことだとは思うが、このせいでお仕事紹介と主人公の仕事の面での成長以外の部分は全くないと言ってもいい。物語を進めるキーパーソンである双子の姉妹和音と由仁も外村にとっては、言ってみれば単なる顧客にすぎない。恋愛感情などは全くない。小説の、小説たりうる要素があまりにも希薄すぎる。

感動的なエピソードもあるのに、さらっと語られなんか薄味の読後感。食べてる間は夢中で食べても後で物足らない糖質offとか脂質ゼロの食事みたい。

本屋大賞ってこんなもんなのかな〜