フィッツジェラルド 若者はみな悲しい

フィッツジェラルドの短編集を小川高義氏が翻訳した「若者はみな悲しい」読了。 原著は1926年に出たこの作家の3番目の短編集で、1920年代のアメリカの若者たちの青春を描いた9作を収録。

「ギャツビー」と同じようになんとなくきらびやかな雰囲気がある中で、でもあの作品ほど矛盾がなくとても読みやすい。ああフィッツジェラルドって短編作家なのねと納得する。この小川高義氏の翻訳はシンプルで読みやすく私はとても好きなのだが、かなり意訳というか超訳な部分もあって疑問を感じる人もいると思う。そもそもこの短編集の原題は「All the Sad Young Men」なので正確には「すべての悲しい若者たち」みたいな感じで、「若者はみな悲しい」はかなり無理があると思う。でも読んでみると、このタイトルに納得しちゃう。

ほとんどの作品が青年の青春の蹉跌を描いたもので、特に冒頭の「お坊ちゃん」は本当に愛した女性を失って宙ぶらりんな気持ちを抱えたままになってしまう青年の話。要するに「ギャツビー」と同じテーマの作品なのだが、「ギャツビー」のような余分で雑な要素がなく、きれいにまとまっていてとても良い作品だと思う。

「ラッグス・マーティン=ジョーンズとイギ〇スの皇〇子」は高根の花の女性を振り向かせるために一計を案じる男の話。軽いノリで非常に楽しい話でちょっと意外なくらいだ。他もどれもレベルの高い作品ばかりで、はっきり言って「ギャツビー」なんかよりこの短編集を読んだほうがいいと思う。

思っていた仕事に就けず、その仕事がうまくいかず、その結果愛する女性を失った男が、一年後成功して彼女の元に求婚しに戻る「『常識』」という短編も印象的。 うんうんわかる。100年たっても、若者はみな悲しいのだ。