エスピノーザ編 スペイン民話集

岩波の世界の民話集シリーズのスペイン編。エスピノーザという学者が蒐集、編纂した280篇にものぼる「スペイン民話集」から82篇を抜粋した抄訳版。抄訳とはいえ400ページに迫るかなりのボリュームだ。岩波の民話シリーズは「イタリア(2巻)」「スペイン」「フランス」「イギリス」「ハンガリー」「ラテンアメリカ」「中国」それに「ロシア」はアファナーシェフ編とトルストイ編それぞれ2巻が出ていて、たしか日本も「昔話」で全3巻あったような。それに中国の怪異譚集「聊斎志異」、「唐宋伝奇集」、アラブを中心に世界の昔話の集成ともいえる「千一夜物語」などを加えると世界中の民話・昔話をほぼ網羅しているといえる。

私はこの中では中国の怪異譚と「イタリア」「ロシア(トルストイ)」くらいしか読んでいない。以前20年くらいかけて「千一夜物語」を読んだが、これも含めて様々な国の様々な民話と相互に共通点が多くてとても興味深い。この「スペイン民話集」でもほかの国の民話とのつながりが随所に感じられてとても興味深く読んだ。

とは言いながらそれぞれの作品はとてもシンプルで、ものによってはかなり断片的な話だったりして、感想もなにも書きようがないが、なかなか楽しい読書だった。
でも昔話だからと言って子供に読んでやっちゃダメ(笑)。スペインだけにもっとアラブ(千一夜物語)っぽいのかと思いきや思ってたよりは普通。でもやっぱり、「千一夜」ほどではないにしてもエロ小噺も多数混入している。
他の国に比べると宗教絡みの話が多いのだそうで、でも神父が農夫と姦通してたりするパターンもあって、単純に信心深いとも言えない。あと悪漢ものが多いのが特徴か。
イタリア民話集に何度か出てきた、ハッピーエンドの後に「でも私にはなにもくれなかった」というフレーズが一度だけ出てきたのには笑った。