最近読んだコミック

まあ基本マンガは読まない。だってしょうもない作品が多すぎる。でも一握りは面白い作品もあるわけで。

道満晴明という作家は私が唯一今でもチェックしているコミック作家である。以前この人の作品を読んだらその他の作品が全然面白く思えなくなってマンガ読むのをやめたほどだ。この人の作品は8Pの短編を集めた「ニッケルオデオン」全3巻、12Pの短編集「メランコリア」全2巻などはキレのある短編が緩くつながった構成が非常に巧みだし、3巻の長編「ヴォイニッチホテル」は8ページずつの連載で長年にわたって描かれたものだが驚くほど緊密な構成で驚かされる。そこに乾いた笑いと小ネタをまぶして他の追随を許さない唯一無二の作家なのだが、そんな道満氏の最近作「バビロンまでは何光年?」(全1巻)を読んでみた。

これはSFだ。「銀河ヒッチハイクガイド」をメインにエロネタや様々なSFの小ネタをまぶしてあちこちに寄り道しながら、ちゃんと計算通りの着地点に見事に着地する。一巻ものなので「ヴォイニッチホテル」ほどのカタルシスはないがやはり見事としか言いようがない。いやー道満晴明やっぱすごいわ。

 

さて傾向が全く違う作品を紹介して申し訳ないが、斉木久美子という作家の少女マンガ画「かげきしょうじょ!」という作品を読んだ。現在8巻まで発売されている。これは明らかに宝塚をモデルにした紅華歌劇団の養成学校に入った渡辺さらさという元気印の少女の物語で、これに元アイドルだが表情の硬い奈良田愛というサブヒロインを絡めて宝塚の学校の日々を描き出す。全く宝塚には興味ないが、これは非常に興味深く読んだ。登場人物の配置などいかにも少女マンガのテンプレに沿った作品だが、宝塚ってそれ自体が少女マンガ的なので見事に嵌っていると言えるだろう。

 

今世間でちょっと話題なのが萩原あさ美という作家の「娘の友達」という作品。現在第2巻まで発売されている。妻に死なれ娘は登校拒否。そんなサラリーマンの晃介の前に突然娘の同級生の女子高生古都が現れる。…というわけで中年男の妄想みたいな作品かと思いきやなかなかリアルな話で、かなり粘着質っぽい古都の母や、娘の美也にも古都とのことがばれそうな展開になってきてかなり重い。古都の行動が普通ならあり得ないように思えることもあり、あんまり続き読みたいとは思わないな。まあこれはそのうちTVドラマか映画で映像化されそうな気はする。

 

山本宗一郎からかい上手の高木さんはアニメから入った口なのだが、これはすごい作品かもしれない。一昔前に「セカイ系」というのが流行った。これは「私」と「あなた」の関係を世界のありよう(または破滅)と等価に描くというものだったのだが、この作品に至ってはもはや「セカイ」さえどうでもよく、「私」と「あなた」の関係だけを見つめた驚くべき作品だ。この作品での高木さんと西片君の関係は、普通の中学生なら当然考えなければならない事、ほかの友人との関係とか親とかあるいは受験とか将来の事とか、そういうことはあくまで背景に押しやってある。ふたりの恋の駆け引き(とは西片は思ってないようだが)だけが描かれていて、それを読んで読者はニヤニヤする、ただそれだけでこれだけの破壊力があるというのはすごい。

ただアニメ第2期の最終回があまりにも神回だったのでコミック作品は割を食った感はある。