ウルリヒ・ヘルベルト 第三帝国

以前からドイツという国がなぜワイマール憲法下の民主主義国家からナチスのような極右独裁国家になってしまったのかか疑問だった。そこでこの新書本を読んでみた。

まあ新書本なのでそんなに詳しく書かれているわけではなく、ナチスがどのようにして起こり、どのような経緯で政権を握り、どんな蛮行を働き、そしてどうして滅んだかを教科書的に大まかに書いてある。大まかなので私のように手っ取り早く知識として得たい向きにはちょうどいい本だが、完全に入門者向きで、詳しく知りたい向きにはナチスの権力掌握の流れと、その後の対外政策・戦争、そしてジェノサイドはそれぞれ一冊を費やしても全然足らないようにも思う。

さて、ナチ党はいきなり選挙で過半数を取ったりしたわけではなく、別な右派の政党と連立政権を組んだ上で権力を掌握したのだという。この事だけでも民主主義がいかに当てにならないかがよく分かると思う。国民がなぜこの極右政党を支持したかというとその前提には、第一次世界大戦で敗戦国になったドイツはフランスに莫大な賠償金を課せられ、それで国民生活もかなり厳しい状態になっていたということがある。そういう細かいバランスと時代の流れがいつの間にかナチスの台頭を生んでしまうというのはとても恐ろしい。

わが国の、近い未来でもこのようなことは起こりえる。アベが退陣して最近はあまり言われなくなったが、改憲の議論はもっと慎重であるべきだ。下手な改憲を許すとわが国が、あっという間にナチスばりの独裁監視国家に変貌する可能性もあると本気で思う。