ジャック・ヴァンス 「冒険の惑星」四部作

ジャック・ヴァンスの「冒険の惑星」4部作を読んだ。 これは原題では「Planet of Adventure」という、ヴァンスの作品としては珍しい書下ろしシリーズとして1968年から1970年にかけて出版されたもので、日本では主人公の名をとって「アダム・リース」シリー…

Star Trek : Strange New Worlds 第2話、第3話

第2話 Children of the Comet 訳せば「彗星の子どもたち」というところかな。 M型惑星で原始的な文明が存在しながら砂漠ばかりの星、ペルセボネ3に彗星が激突することが判明。これを阻止しようと光子魚雷を撃ち込むエンタープライズ。しかし彗星にはなぜかシ…

スタニスワフ・レム マゼラン雲

レムの初期の作品で、著者の意向でこれまで翻訳を許されなかったいわくつきの作品。 2段抜きで450ページにわたるかなりの大部で読むのに相当時間がかかった。 32世紀。人類は巨大宇宙船ゲア号でアルファ・ケンタウリを目指す片道10年の探査に出る。医師の父…

Star Trek : Strange New Worlds 第1話

さて5月5日から米国で配信開始になった「スタートレック ストレンジ・ニュー・ワールド」だが、依然として日本での配信・放送の目途が立っていない状況が続いている。要するに日本のファンは普通の方法では観ることができないのだが、どうしても観たいとい…

スタートレック・ピカード

「スタートレック・ピカード」はあのピカード艦長のその後を描くシリーズ。先日第2シーズンの配信が終了した。第1シーズンは人口生命体をめぐる話で、話自体も地味だったし、なによりこれまでと違う倫理観の欠如した連邦の態度に疑問があり、正直不満だった…

雪国 Snow Country

先日NHK-BSで放送された、川端康成の名作小説「雪国」を高橋一生、奈緒主演でドラマ化した映像作品。 「雪国」は川端の作品としては「伊豆の踊子」に次ぐような回数で、何度となく映画やドラマで映像化されているのだが、どれも全く観たことがなかった。「伊…

ボクらはみんな大人になれなかった

2021年劇場及びNetflixにて公開された邦画。原作は「燃え殻」というペンネームの作家による同名の小説。森義仁監督、森山未來、伊藤沙莉主演。 TV番組で使うフリップやCGを制作する会社に勤めている40代の男性・佐藤。ある日facebookの「友達かも」に昔の恋…

レイモン・クノー 地下鉄のザジ

レイモン・クノーの代表作「地下鉄のザジ」を、白水社レイモン・クノー・コレクションの久保昭博による翻訳版にて読了。 ザジという10歳くらい(?)の女の子がパリに住む叔父のガブリエルに預かられることになってやってくる。ザジはパリで地下鉄に乗ること…

アナトール・フランス 聖女クララの泉

白水社「アナトール・フランス小説集」の第8巻。この作家お得意の、宗教にまつわる短編を集めた作品集。 冒頭に置かれた「神父アドネ・ドニ」で、ここに収められた短編が「聖女クララの泉」のほとりで神父アドネ・ドニによって語られたものを書き留めたもの…

中村真一郎 秋

中村真一郎の「四季」四部作の第3作。私は第1作「四季」を2008年に、「夏」を2014年に読んでいて、今回ようやく第3作を読むに至ったわけだ。前2作の記憶も曖昧ななか読み進めると、前作では語り手である「私」の、自殺同然に亡くなった妻のことに触れながら…

ユヴァル・ノア・ハラリ 21Lessons

ベストセラーとなった「サピエンス全史」「ホモ・デウス」の著者で、イスラエルの歴史学者・哲学者の著者が、現代人と現代社会の直面する問題について、どのように思考し行動すべきかを語った著作。原著は2018年出版。本文だけで500ページの大著だが大変興味…

ウエスト・サイド・ストーリー

あの名作映画「ウエストサイド物語」をスピルバーグがリメイクした作品。 旧作は私が大好きな映画で、「冒険者たち」などと並んでこれまで見た映画の中で最も好きな映画のひとつである。当然そうなるとリメイク作に対する評価は辛くなるわけだが、しかしこれ…

マンダロリアン

disney+で配信されている「スター・ウォーズ」の外伝的なドラマシリーズ。エピソードⅥで帝国が崩壊して数年後、本編に登場したボバ・フェットと同族の、マンダロリアンの賞金稼ぎの男がひょんなことからあのヨーダの同族の子供「ザ・チャイルド」を連れて銀…

ダシール・ハメット  チューリップ

ハードボイルドの創始者ハメットの未完の中編小説「チューリップ」をメインに短編を集めた作品集。古本屋で安かったので購入して読んでみた。 表題作は花のチューリップとは全く関係ない話で、著者自身の身辺雑記のような小説である。表題のチューリップとは…

福永武彦 死の島

今日1月23日は私の最愛の小説、福永武彦「死の島」の日。これを記念して、以前旧ブログに上げたロングレヴューを再掲させていただきます。。 昭和29年1月23日。都内の小さな出版社に勤める小説家志望の青年相馬鼎(そうまかなえ)は、懇意にしている画家、萌…

シュティフター 石さまざま

先日紹介したケラー「白百合を紅い薔薇に」とともに中央公論社「世界の文学」第14巻に収録されていたオーストリアの作家アーダルベルト・シュティフターの代表作。6作からなる短編集。前にも書いたが岩波文庫の「水晶 ほか3編」ではそのうち4作しか収録さ…

スタニスワフ・レム 地球の平和

ついに刊行されたレムの「泰平ヨン」シリーズ最終作。長らく翻訳を待っていた作品をついに読むことができて大変嬉しい。 冷戦でエスカレートするばかりの軍備拡張に倦んだ各国の人々は、軍事産業をすべてAIに任せたうえで、月で行うことにする。しかしその後…

ケラー 白百合を紅い薔薇に

オーストリアの作家アーダルベルト・シュティフターが好きなのだが、彼の代表作で6作の短編からなる短編集「石さまざま」という作品がある。これが岩波文庫では『「水晶」ほか』とされて4作しか収録されていない。以前松籟社から2分冊で出ていたが現在は入…

ショーン・タン 遠い国から来た話

今年は延べ一ヶ月にもわたる入院があって、その間ほぼ一日一冊くらい読んだし、トータルではかなり本を読んだ。このブログで記事にしただけで50冊。記事にしてないものもある(実は今月もタブッキを二冊再読した)し、それなりに感銘を受けた作品もあったの…

カウボーイビバップ

1999年に日本で製作された同名のアニメシリーズを海外のスタッフ・キャストでドラマ化したもの。全10回がNetflixで先日公開された。私は原作アニメのファンなので早速観た。日本語吹き替え版はアニメのオリジナルキャストというのも話題だったが、日頃映画も…

モーリス・ルブラン 奇巌城

さて今回読んだのはルパンシリーズでも屈指の傑作とされていてファンも多い「奇巌城」。 ジェーブル伯爵邸で、殺人事件と絵画の盗難事件が発生。負傷したはずのルパンが見つからない中、高校生探偵イジドール・ボートルレが見事に謎を解く。やがて伯爵令嬢レ…

ペーテル・レンジェル オグの第二惑星

全く知らなかった作品だが、メルカリで見つけてしまった以上は東欧SF好きとしては外せないな、というわけで読んでみたハンガリーSF。 2600年前。宇宙探索から母星エーラに帰還した一隻の宇宙船があった。彼らは船内時間で20年に渡って様々な星々を旅してきた…

レーモン・クノー 人生の日曜日

前回短編集「あなたまかせの物語」が面白かったレイモン・クノー。この作家、フツーは「地下鉄のザジ」から読むんだろうけど、中古で出てたのでなんとなくこれを買って読んでみた。 1930年代後半のフランス。5年も兵役についていながら未だに二等兵のヴァラ…

レーモン・クノー あなたまかせのお話

クノーは20世紀中盤に活躍したフランスの作家。 かなり前衛的な手法で作品を書いた作家らしいのだが、今回初めて読んだ。これは短編集で、彼の短編のほぼ全てが収められている。フランスでは長編小説のほうが圧倒的に人気があり、短編小説はあまり読まれない…

機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ

今年公開された「ガンダム」シリーズ最新映画。早くもNETFLIXなどネット配信で登場。 シャアの反乱から十数年後。宇宙世紀でいえば110年代の中盤。地球へ向かうVIP専用高級シャトル「ハウンゼン」は反連邦組織マフティーを名乗るテロリストの襲撃を受ける。…

スタニスワフ・レム インヴィンシブル

国書刊行会の「スタニスワフ・レム・コレクション」第2期の最初の配本は飯田規和氏の翻訳で「砂漠の惑星」としてハヤカワから出ていた作品の新訳版。 宇宙巡航艦インヴィンシブルは、かつて同型艦コンドルが消息を絶ったレギス第3惑星を訪れる。そこで異形の…

ゲーテ ヴィルヘルム・マイスターの修業時代

昔から一度くらいは読んでおきたいと思っていた「ヴィルヘルム・マイスターの修業時代」を読んでみた。全3巻。 まあまずは率直な感想。なんなんだこれ。「ファウスト」には感動したのに、これには全く共感できない。 まず主人公ヴィルヘルムのブルジョア的理…

ローレン・ローズ これだけは見ておきたい 世界のお墓199選

国書刊行会のHPで見かけて、これ面白そうと思ったんだけど高額でとても買えない。というわけで図書館から借りてきて10日余りかかってやっと読み終わった。 これは世界中の199の墓地についてそれぞれ最低一枚の写真とその墓地にまつわる興味深いエピソードが…

永遠の門 ゴッホの見た未来

米英仏共作、2019年のジュリアン・シュナーベル監督作品でゴッホの伝記映画「永遠の門 ゴッホの見た未来」をNetflixで観た。 まず主演のウィレム・デフォーが自画像のゴッホそっくりでびっくり。アルルに移住するちょっと前くらいからのゴッホの晩年を詩的に…

スタニスワフ・レム 宇宙飛行士ピルクス物語

国書刊行会から「スタニスワフ・レム・コレクション」の第2期が今月から刊行されることになった。レムファンの私としては喜びのあまり、おさらいではないけど「ソラリス」「虚数」それにこの「ピルクス」と続けて読んでしまった。 「宇宙飛行士ピルクス物語…