ペーテル・レンジェル オグの第二惑星

全く知らなかった作品だが、メルカリで見つけてしまった以上は東欧SF好きとしては外せないな、というわけで読んでみたハンガリーSF。

2600年前。宇宙探索から母星エーラに帰還した一隻の宇宙船があった。彼らは船内時間で20年に渡って様々な星々を旅してきたのだが、その間エーラでは700年が経過していた。その世界では人々は宇宙を開拓する情熱を失っていた。宇宙船で帰還したイゴ・ヴァンダルをはじめとする人々は、なぜエーラの人々が宇宙への情熱を失ったのか探るうちにそこにエーラの命運を左右する恐るべき侵略者の秘密が隠されていることに気づく。

前半はレムの『星からの帰還』みたいな、未来社会でまごつく人々について書く話になるのかと思いきや、700年も経っているのにカルチャーショックを受けるような描写は一切なく、事前に情報を得てはいたとはいえすぐに未来社会に馴染んでしまって拍子抜け。それから『三体』の劉慈欣原作Netflix映画『流転の地球』と同じように、星ごと他星系に移住しちゃうというかなり無茶な展開になる。そして二千数百年後、いよいよ侵略者との対決と思いきや、驚きの拍子抜けエンドへ。

まあハードSFといえばそうなんだけど、なかなか盛りだくさんで、やや盛りすぎた感があり、なんだか話があちこちに飛んでしまった印象。この一冊だけで3000年ものタイムスパンがあるわけで、そういう意味では途方もないスケールのでかい話だが、その割に内容としては結構ショボいかも。 タイムスケールが大きいので全編を通じての主人公がいるわけでもない。イゴ・ヴァンダルなんかは最後のほうでは伝説の人扱いになっている。地球人は最後の方でエーラ人と侵略者の戦いの決着について述べるだけの第三者的な視点の語り手として登場してくる。 タイトルの『オグの第二惑星』というのも最後の最後まで全く出てこない。

翻訳がいかにも古臭いのも気になる。 作者はハンガリー人で様々な英語作品をハンガリー語に翻訳している人のようだ。でもハンガリー人は苗字が先のはず。レンジェル・ペーテルが正しいと思う。