2021-01-01から1年間の記事一覧

カズオ・イシグロ 遠い山なみの光

入院6日目。運動不足なので入院している7階から1階のコンビニまで歩くんだけどさっき登ってきたら素通りして8階までいきそうになっちゃった。 さてイシグロの「遠い山なみの光」を読んだ。翻訳小説なのにすらすら読めて三時間もかからず読了。 イギリスの田…

スタニスワフ・レム 大失敗

入院4日目。やっと明日から本格的に治療に入ることになった。一体いつまで入院しないといけないのやら。あまりにヒマなので本の他にもNetflixの動画とか大量にタブレットにダウンロードしてきたんだけど何だかすぐ読み/観終わっちゃいそう。 なんか重量級の…

宮下奈都 羊と鋼の森

入院2日目。 これはピアノの調律師になった青年が主人公の成長物語。調律師という地味な職業について、おそらくは徹底的な取材をしたのであろう、非常に詳しく書かれていてすごく興味深く読んだし面白かった。しかしこれは小説としてはどうだろう? 1番に気…

平野啓一郎 マチネの終わりに

実は昨日から入院してて、長引くかもしれないので多めに本を持ち込んだ。その一冊めを早速読んだ。なんか映画化もされてるみたいなので面白いかなと思って読んでみたのだが、なんじゃこれ。アホみたいな恋愛小説。マジ薄っぺらい。 40歳前後の男女、世界的な…

イワン・エフレーモフ アレクサンドロスの王冠

イワン・エフレーモフは「アンドロメダ星雲」、「丑の刻」などの作品で知られるソビエト連邦時代のSF作家。上に挙げた二作は宇宙探査を描いた作品で、のちのアメリカのSFドラマ『スタートレック』の原型かとも思えるほどのハードSF。書かれた時代の背景から…

新田次郎 アルプスの谷 アルプスの村/白い野帳

「新田次郎全集」の第22巻は名だたる山岳小説で知られる新田次郎のエッセイ作品をまとめた一冊だが、これに収録されている「アルプスの谷 アルプスの村」と「白い野帳」を読了。 「アルプスの谷 アルプスの村」は昭和36年に新田がヨーロッパアルプスを初めて…

LUPIN / ルパン

NETFLIXで配信されたオマール・シー主演のフランスのドラマ。全10話で一貫したストーリーの作品なのだがなぜか前半5話が1月に、後半の5話が先日公開された。1月に前半5話が公開されたときに観たのだが、「え!そこで『続く』⁉」という感じの幕切れだったので…

チゴズィエ・オビオマ ぼくらが漁師だったころ

舞台は1996年。主人公はナイジェリアの小さな町に住む6人兄弟の4番目ベン。3人の兄イケンナ、ポジェ、オベンベと一緒にいたずらをしては父や母にお仕置きをされながらも楽しく暮らしていた。ある日禁じられていた川で釣りをしたことがばれて父に手痛い折檻を…

ゴジラS.P<シンギュラポイント>

NETFLIXで公開されていたゴジラの新作アニメ全13話。SPは「シンギュラリティ・ポイント」すなわち「特異点」の意。 逃尾町という田舎町の「ミサキオク」という施設で異常な電波の発信が起きて顧問の教授の代理として呼ばれた研究員の神野銘。同じ施設の電気…

佐藤正午 月の満ち欠け

私と同郷の佐世保市出身の作家、佐藤正午が2017年に直木賞を受賞した作品。岩波書店から文庫で出たものを内容などに全くの予備知識なしで読んだ。 初老の男性小山内堅(おさないつよし)は、7歳の少女緑坂るりとその母ゆい、そしてもう一人の男性三角に会う…

須賀敦子 時のかけらたち/地図のない道

須賀敦子全集第3巻の「時のかけらたち」及び「地図のない道」の部分を読了。 「時のかけらたち」は須賀さんが訪れたヨーロッパの様々な場所の記憶を辿って書かれたエッセイ12篇。ここでは主役は「場所」そのもので、その「場所」をめぐっての須賀さん自身や…

フィッツジェラルド 若者はみな悲しい

フィッツジェラルドの短編集を小川高義氏が翻訳した「若者はみな悲しい」読了。 原著は1926年に出たこの作家の3番目の短編集で、1920年代のアメリカの若者たちの青春を描いた9作を収録。 「ギャツビー」と同じようになんとなくきらびやかな雰囲気がある中で…

エスピノーザ編 スペイン民話集

岩波の世界の民話集シリーズのスペイン編。エスピノーザという学者が蒐集、編纂した280篇にものぼる「スペイン民話集」から82篇を抜粋した抄訳版。抄訳とはいえ400ページに迫るかなりのボリュームだ。岩波の民話シリーズは「イタリア(2巻)」「スペイン」「…

アゴタ・クリストフ 昨日

ハンガリー生まれで戦後亡命しフランス語で作品を書いたアゴタ・クリストフ。代表作「悪童日記」が有名だが読んだことがない。彼女の作品は初めて読んだ。 主人公トビアスは祖国の寒村で娼婦の息子として生まれるが、出生の秘密を知り母とその愛人を殺そうと…

オードリー・ニッフェネガー タイムトラベラーズ・ワイフ

古本屋で上下巻計400円で購入。2003年に刊行された作品で、タイムトラベルもののSFの設定をベースにした恋愛小説である。 主人公ヘンリーはタイムトラベラーだが、この作品では彼のこの能力は彼の先天的な障害として描かれている。タイムトラベルはランダム…

ケン・リュウ もののあはれ

先日紹介した「紙の動物園」に引き続き中国系米国人SF作家ケン・リュウの短編集。8作収録。 表題作はわりと普通のSF。主人公ヒロトは久留米出身の青年で、地球の滅亡にあたって両親のコネで脱出船に乗り込むことができた。だが、船は危機に見舞われ、ヒロト…

ジャック・ヴァンス 愛の宮殿

ジャック・ヴァンスのSFミステリ「魔王子シリーズ」第3巻。今回のターゲットは美と官能を愛する偏執狂的犯罪者ヴィオーレ・ファルーシ。彼の名前を新聞記事で見つけたガーセンは、彼が若いころに起こした誘拐事件の当事者から彼が初めて犯したその事件の顛末…

カズオ・イシグロ 日の名残り

日経英国人のノーベル賞作家カズオ・イシグロの長編小説。アンソニー・ホプキンス主演で映画化もされている。 英国の名家の屋敷ダーリントン・ホールの執事スティーブンスは短い旅に出る。美しい田園風景の道すがら、彼の胸中には様々な思い出がよぎる。 戦…

山尾悠子 山の人魚と虚ろの王

山尾悠子の新作。国書刊行会から先日発売され、その美しい装丁に度肝を抜かれながらも作品の短さを考えるとなかなかの高額書籍だが思い切って購入。 若い妻との新婚旅行に出た「私」は妻の伯母の訃報に触れ、夜の宮殿の観光を経て叔母の葬儀に向かうが...と…

須賀敦子 ユルスナールの靴

須賀敦子全集第3巻の「ユルスナールの靴」の部分を読了。 これはこれまでの作品とは少々趣が違う作品で、須賀さんが敬愛してやまないフランスの作家マルグリット・ユルスナールの人生と須賀さん自身の人生を重ね合わせたようにしてして書かれた9作(プラス「…

天気の子

新海誠の2019年公開の最新作。やっと観た。 最近のゲリラ豪雨とか異常気象をネタにした発想はお見事。相変わらずの美しい映像には息を飲む。でもこれまでの作品同様シナリオはテキトーで、一番の問題点は主人公帆高がなぜ家出してきたのか、ヒロイン陽菜はな…

ケン・リュウ 紙の動物園

作者は中国系アメリカ人SF作家。これは新書版の「ハヤカワSFシリーズ」で出ていた同名の短編集から7作を収録した短編集。 いやこれは素晴らしい。特にアメリカ人男性の父のもとに身売り同然にして嫁いできた母への複雑な感情を描いた表題作と、1961年の台湾…

劉慈欣 三体

最近SFファンの間で何かと話題の中国SFの大ヒット作。古本屋で見かけてつい買ってしまったのだが読んで後悔している。だって続編買わないといけなくなっちゃった。 物理学者の父を文化大革命で惨殺され、人類に絶望した中国人エリート科学者・葉文潔(イエ・…

ジャック・ヴァンス 殺戮機械

ジャック・ヴァンスのSFミステリ「魔王子シリーズ」第2巻。今回のターゲットは「殺戮機械」の異名をとるココル・ヘックス。ある男性を奪回する任務でココル・ヘックスと近い人物と接近しながら逃してしまったガーセンは究理院の大物に誘拐された子供の救出を…

クイーンズ・ギャンビット

NETFLIXのドラマ。「リミテッド・シリーズ」という題目でワンシーズン全7話で完結の作品。世界で大ヒットのドラマということで面白そうだったので観た。原作は『ハスラー』『地球に落ちてきた男』で知られるウォルター・テヴィスの小説なのだが邦訳はまだな…

ボルヘス怪奇譚集

書店で見かけてつい買った。ボルヘスとビオイ・カサーレスが世界中の書物から選りすぐったちょっとヘンなお話を抜粋あるいは凝縮して集めた不思議な本。 これはすごい本だ。短いものは数行、一番長くて5ページくらいの古今東西の物語が詰め込まれている。出…

ジャンニ・ロダーリ 緑の髪のパオリーノ

イタリアの作家ロダーリの、おそらく子供向きに書かれたショートショート集。以前にも同じスタイルで「パパの電話を待ちながら」があったので第2弾といったところだろうか。 サラッと読めて教訓も含まれている、小さな子に読んで聞かせるにはちょうどいい感…

ジョン・テレン トラファルガル海戦

実家に置きっぱなしだった40年前の本を引っ張り出してきた。1805年、ナポレオンの英国侵攻作戦を阻止すべく、ネルソン提督麾下の英国艦隊が仏西連合艦隊を迎え撃ち、完膚なきまでに打ち破ったトラファルガル海戦についてその戦いに至るまでの経緯と海戦の詳…

エリック・シーガル ラブ・ストーリー

映画「ある愛の詩」の原作として有名な作品。高校生の時読んで感動して、同級生で友人の、後に漫画原作者として活躍した鍋島雅治くんに勧めたらこういうのは苦手とか言いながら読んでやはり感動したと言ってたな。その鍋島くんも一昨年の年末に亡くなってし…

麒麟がくる

2020年のNHK大河ドラマ。明智光秀を主人公に、彼がなぜ本能寺の変に至ったのかを描いた作品。ご存じの通り放送開始直前に主要出演者が逮捕されるという事態になり、急遽代役を立てて撮影しなおしたため、放送開始が2週間伸びた上に、春からのコロナ禍で撮影…