麒麟がくる

2020年のNHK大河ドラマ明智光秀を主人公に、彼がなぜ本能寺の変に至ったのかを描いた作品。ご存じの通り放送開始直前に主要出演者が逮捕されるという事態になり、急遽代役を立てて撮影しなおしたため、放送開始が2週間伸びた上に、春からのコロナ禍で撮影中止を余儀なくされ途中で放送も中断されるという異例の事態に。結局年明けの先日7日に最終回が放送されて完結した。

明智光秀という人は謎が多い。信長の家臣となる以前の前半生がよくわかっていないし、本能寺の変そのものが、なぜ彼がそんなことをしたのか謎だらけだ。さらに彼の、歴史書に書いてある死亡のいきさつは山崎の戦いに敗れ、敗走中に夜盗に殺害され、首は隠されたのだが発見されてその後晒されたとなっているが、これもかなり怪しいと思う。その後生き延びて徳川幕府の形成にかかわったとも言われるがその傍証(徳川幕府周辺で明智の関係者が結構重用されているなど)も意外と多い。「麒麟がくる」では、光秀がなぜ本能寺の変を起こすに至ったのかを非常に丁寧に描いたうえ、生存説を支持する形でのラストになっていたのは新鮮だった。

作品全体も前半は斎藤道三との、後半は織田信長との関係に力点が置かれ、光秀を強烈なこの二人の主君に仕えながら平和な世を目指した理想主義者として描かれていたのもこれまでにない光秀像だったと思う。

途中架空の登場人物の平民の女性、駒や伊呂波太夫が大活躍で、彼女らのコネクションが強力すぎて鼻白むところもあったが、コロナ禍で撮影が遅れ、大規模な戦闘シーンなどの撮影が困難になったうえ俳優のスケジュールが厳しくなった中でドラマ的には面白い方向性だったのではとは思う。ただ駒を演じた女優さんがちょっと暗いイメージであまり好きではなかったかな。

主演・光秀の長谷川博巳、道三の本木雅弘、信長の染谷将太など新鮮なキャストがそれぞれ新鮮な武将像を描き出して面白かったが、なかでも佐々木蔵之介が演じた腹黒い秀吉が見事だった。

それとなんといっても代役で道三の娘帰蝶を演じた川口春奈。彼女はこの作品で大きく株を上げたよねえ。もともとこの番組観る気なかったのに観始めたのは彼女を見たかったからなんだけど、おかげで一年楽しく観ました。大河ドラマ通しで見たのっていつぶりだろう。面白かった。