ジャンニ・ロダーリ 緑の髪のパオリーノ

イタリアの作家ロダーリの、おそらく子供向きに書かれたショートショート集。以前にも同じスタイルで「パパの電話を待ちながら」があったので第2弾といったところだろうか。

サラッと読めて教訓も含まれている、小さな子に読んで聞かせるにはちょうどいい感じの本で、もうちょっと大きくなったら孫にも聞かせてあげたい。原題での表題作「パオリーノの木」は緑色の髪(葉っぱ)を持ったパオリーノの人生をわずか3ページに圧縮して、そんな異形の人でありながら誰もが彼を認め愛していたことが語られる。これ以外の作品でも、他の人と同じでなくてもいいという事が基本的な考え方で、それが作品に滲み出ているのがヨーロッパらしい。小さい時から人と同じでなければならないと教える日本の教育と大きな差があると思ってしまう。

ほかもロダーリらしいひねりのきいた作品が多いのだが各作品がいかんせん短すぎて、大人が読むにはちょっと物足りないかな、と思ってたら最後のほうは少し長い話が載っている。子供の成長に合わせて後ろのほうの作品を紐解いていくのも楽しそうだ。

翻訳は名エッセイストの内田洋子さん。エッセイにおけるこの方は文章も取り上げる内容も須賀敦子さんの後継者だと思っているのだが、残念ながら翻訳は須賀さんの域にはまだ届いていないかな。ハードルが高いことを承知で言わせてもらえば、ネズミたちの名前とか語呂合わせみたいなところも須賀さんなら日本語の駄洒落に変換してくれたのではないかという気がする。