ボルヘス怪奇譚集

書店で見かけてつい買った。ボルヘスとビオイ・カサーレスが世界中の書物から選りすぐったちょっとヘンなお話を抜粋あるいは凝縮して集めた不思議な本。

これはすごい本だ。短いものは数行、一番長くて5ページくらいの古今東西の物語が詰め込まれている。出展が各作品の最後に書いてあるが中にはその出展元が謎なものもあると聞くし、ここに書かれたものがその書物の一節を抜粋したものなのかそのストーリーの梗概なのかすらよくわからないのだが、わずか数行の「物語」でも読者をぎくりとさせるには十分な迫力があるものばかり。逆に長い作品のほうが散漫に思えてしまうくらいだ。山尾悠子作品にもつながるような幻想文学的な手触りのものが多く、「怪奇」というのはちょっと違うように思うが、短くても強烈な余韻が残る作品ばかりでなかなか読み進められなかった。

久々に大当たりの一冊。これはぜひハードカヴァーでほしい。