実家に置きっぱなしだった40年前の本を引っ張り出してきた。1805年、ナポレオンの英国侵攻作戦を阻止すべく、ネルソン提督麾下の英国艦隊が仏西連合艦隊を迎え撃ち、完膚なきまでに打ち破ったトラファルガル海戦についてその戦いに至るまでの経緯と海戦の詳細について書かれたドキュメンタリー。
まだ蒸気船が一般的でなかった時代の海戦の様子はもとより、そこに至るまでの両国・両軍の事情が当時の書簡などを引用しながら詳細かつ立体的に書かれて非常に興味深かった。
ナポレオンは陸戦にかけては天才だったが、海戦についてはまったく理解度が低く、当時の仏海軍司令官だったヴィルヌーヴ提督は英国艦隊と戦う前にナポレオンの無理解と戦う必要があった。また兵士たちの練度も低く、英国の艦が二回砲撃する間に仏・西の艦は一度しか砲撃できなかった。さらにフランス、スペイン、オランダと各国の艦隊の寄せ集めで連携も悪い。これでは勝つわけがない。しかし英国艦隊のほうもドーバー海峡と地中海の両方を防衛する必要があるなど様々な問題を抱えていた。英国艦隊はカディス港など連合艦隊の拠点を封鎖する作戦に出る。
帆船の時代だ。風向きで状況が一変してしまう。無線なども当然ない時代で情報の伝達もままならない。そういう時代にどうやって戦争をしたのか、そういう面でも大変面白く読んだ。ネルソンやヴィルヌーヴにスポットを当てて小説的な部分があると一般の読者にももっと読みやすかったかもしれないが、帆船時代の海戦について知りたい人にはとても貴重な本だと思う。私が読んだのはかなり古い本だが、現在も新版が普通に手に入るようだ。