ジャンニ・ロダーリ うそつき王国とジェルソミーノ

講談社文庫でイタリアの作家ロダーリの作品が、これまで3冊の短編集が出版されているのだが、4冊目は200ページほどの長編「うそつき王国とジェルソミーノ」。これまでの3冊は内田洋子さんの翻訳だったが、今回は山田香苗さんの翻訳に変更になっている。

大声を出すと窓ガラスが割れたりするという破壊的な声の持ち主ジェルソミーノはその声のせいで故国を追われ、元海賊ジャコモーネが国王として支配するある国にやってくる。そこはうそをつかなければ重罪に問われるというおかしな法律に支配された国だった。ジェルソミーノは落書きから生まれた三本足の猫ゾッピーノや描いたものが本物になってしまう画家バナニート、座っていると急激に年を取ってしまう心優しい「立ちっぱなしのヴェンベヌート」らの仲間たちを得てこの国のおかしな体制に立ち向かうというお話。

実は今、「風と共に去りぬ」を読んでいるのだが、うちにある本が昔よく知識人の家で見かけたような世界文学全集の一冊(正確には上下巻なので二冊)。今日は病院の日だったので持って行って読みたいのだけど、でかい本なのでとても無理。そこでかわりに待ち時間にこれでも読もうと思って持って行って、待ち時間で読み切ってしまった。

まあ基本児童文学なのでとても読みやすい。60年前の作品だそうだが、今読んでも全然古くない。今でも間違った指導者を持った国が自国民を、そして隣国を苦しめている。この一年で世界中が痛感しているように、間違った指導者をただすのはとても難しい。通常の社会生活ですら、正しいことを正しいと言えないことは多い。正しいことは正しい。そんな社会で当然あるべきなのにそうではないことが世の中には多すぎる。

この作品では、結局ジェルソミーノの恐るべき能力でジャコモーネは失脚。これはジェルソミーノ一人の働きで革命が起きたことになる。お話を単純化しすぎたようにも思えるが、子供向きだからこれでもいいのかな。

子供向きなはずなのに小さい子に読んで聞かせるのにはちょっと難しい単語がところどころにあるのが少し気になった。