シュティフター作品集第2巻 習作集2

さてシュティフター作品集。昨年末に読んだ第1巻に引き続き第2巻を読了。こちらも4作の短編が収められている。

巻頭の「アプディアス」。この作品は実は発表当時すごく評判になったらしいのだが、この作家としては異色の作品。ユダヤ人を主人公にし、その舞台もはっきりとは書かれていないが中東もしくはアフリカのようだ。悲劇的な内容もこの作家らしくない。正直この作家の良さがほとんど感じられない。

次の「ブリギッタ」岩波文庫にも収められている作品で、少佐とブリギッタとの中年男女間の友情の行方を描いた作品。長編「晩夏」と同じテーマを扱った重要作品という触れ込みなのだが、「晩夏」に比べるとかなり薄味で物足りない。

「古い印章」は厳格な軍人の父に育てられた若者フーゴーがツェレステという女性と恋に落ちるが、ある日を境に会えなくなる。おりしも始まった普仏戦争で10年間も再会できずにいたが、戦争が終結した後ついに再会することになり、そこでフーゴーはツェレステが実は人妻だったという驚愕の秘密を知ることになる。これはこの第2巻では一番印象の強い作品。フーゴーの怒りもわかるのだが、素性の知れない女といい仲になっちゃうキミの脇の甘さにも責任の一端があるのだよと言いたい。作者のスタンスとしてはフーゴーが父の古い価値観のために一生の幸福を棒に振ったと言うのだろうけど、夫を簡単に裏切ってしまう女と一緒になっても幸せにはなれんだろうと思うのだが。というわけでこういう恋愛の微妙な機微というやつは、現代も変わらぬ問題でもあるわけだ。

「老独身者」は青年ヴィクトルが就職するために故郷の村を離れ、赴任地へ赴く前に伯父の領地を訪れることになる。そこで偏屈な伯父としばらく同居することになるのだが、というような物語。まあとにかく小説の構造としてかなりバランスの悪い作品で、ヴィクトルが旅立つまでがやたらに詳しく書き込まれている。物語の本題としては後半だけでもよかったような気もするのだが、このアンバランスに長い自然描写や主人公の旅の様子や、そんな無駄な部分こそがこの作家の真骨頂ともいえるわけで、そういう意味ではとても楽しく読めた。

というわけで、第1巻から第2巻まで「習作集」からの8作を読んだのだが、この中では第1巻に収録されていた「曽祖父の遺稿」が飛びぬけて良かった。それ以外の作品は合格点なのが5作と、残念なのが2作というところ。

続く第3巻は「石さまざま」から4作と、それ以降の後期の作品から数作という内容。ちょっと間をおいて読もうかなと思っている。