1917 命をかけた伝令

 今年のアカデミー賞で撮影賞など3部門を獲得したサム・メンデス監督の最新作。第1次大戦のフランス戦線を舞台に、敵の罠にはまりそうな味方を救うための伝令に出たブレイクとスコフィールドの二人の兵士を全編ワンカットで追う。全編ワンカットというその技術的なところばかりが話題になっているのだが、ワンカットの不自由さがこの映画のリアルさをさらに深い物にしている(ただし銃撃戦で階段から落ちて気絶するシーンで暗転し、目が覚めると夜になっているので厳密には2カットだと思う)。

観客は酸鼻を極める戦場の悲惨さを、主人公たちと一緒に次々と見ていくことになる。もぬけの殻になったドイツ軍の塹壕でトラップにかかって危うく生き埋めになりそうになったり、撃墜された戦闘機が突っ込んできたり、赤ん坊を連れたフランス人女性に出会って手当てをしてもらったりとか、まあ正直エピソードを盛りすぎだとは思うのだが、シームレスに続く映像を見続けることで、助けてやった敵兵に刺されたり、それで主人公だと思っていたブレイクがあっさり退場したり、死体が累々を浮く川を泳いだりといった情景を彼らと一緒に行動しながら見ているような錯覚に陥る。その分戦場の悲惨さ、無意味さが通常の戦争映画よりも強力に伝わるものになったと思う。シナリオも練ってあって廃屋の民家で見つけたミルクが重要なアイテムになったり、スコフィールドがフランス人女性に子供がいるのかと訊かれたのだがフランス語がわからなかったのか返事をせず、ラストで家族の写真を見るまで家族について全く明かされないなど巧み。

ワンカットについては、実際はいくつかに分けて撮ったものを現代のデジタル・VFX技術を使って繋いだものなのだそうだ。例えば飛行機が落ちてくるシーンなんて危険すぎて、考えてみればVFXに決まっている。じゃああのドイツ軍のトラップに引っかかって二人を大ピンチに陥れる助演動物賞なみのネズミもCGだったのかな。あと川に落ちるシーンはちょっとCG臭かったかな。そこ以外はどこか繋いだところなんて全く分からなかった。ぜひメイキング映像観たい。本編も繰り返し見たら彼らの歩いた場所の地図が描けそう。

俳優さんは知らない人ばかり。ただ伝令を受け取る大佐がホームズ役やドラゴンや虎の役もしたあの超有名俳優でびっくり。出番まで相当待たされたんだろうなあ。