三遊亭円朝 怪談牡丹灯籠

NHKで「牡丹灯籠」のドラマが始まっていて、初回は見逃したのだがついつい第2回を観てしまって、あれどんな話だったっけと思って青空文庫版をkindleで読んだ。

旗本飯島平左衛門の娘、お露は浪人の萩原新三郎に恋したあげく焦れ死にをする。しかしこの世のものではないお露が、夜な夜な、牡丹灯籠を手にして新三郎のもとに通うようになる…というのが「怪談」として有名なのだが、実はこの部分ってこの作品全体から言えばほんのマクラにすぎない。平左衛門の妾お国とその家臣で草鞋取りの青年孝助、新三郎の下男伴蔵など様々な人々が入り乱れて、最終的には孝助が主君である平左衛門の敵を討つ仇討の話になる。

作者とされている三遊亭円朝は言わずもがなの落語家で、これは円朝が演じたものを書き起こしたもの。演じるのに数日かかる長大な噺なので、言い間違い(「水道端」を「水道橋」と言い間違えている部分がある)がそのまま残っていたりするし、落語として語っているので全体にユーモラスで小粋な雰囲気が漂っていて「怪談」のおどろおどろしさはあまり感じられない。

全体では多少の矛盾点や疑問点もある。

お露の死因は新三郎に恋するあまりの焦がれ死にというが、彼女が死ぬシーン自体はなく、正確な死因が何なのかはっきりしない。

平左衛門の家で紛失した百両は誰が盗んだのか。文脈から言えば幽霊のお露が伴蔵にお札を剥がさせるために持ち出したと思えるがこれもはっきりしない。

新三郎の死因は何なのか。あとで伴蔵が自分が蹴り殺したと言っているがどうも納得がいかないし、それではお露の亡霊の話自体が本当なのか疑わしくなるような気がする。

というわけで、古典として十分面白いとは思うのだが、こういう曖昧な部分をもっとクリアーにして、新三郎とお露、孝助とお徳の二組のカップルが同じように女性の方が身分が上で、女性の方が恋愛に積極的なのに、正反対の運命をたどることになるわけで、そこをもっとうまく対比させて見せたらさらに面白くなるのではないだろうか。ってNHKのドラマがその方向性のようだけど。