ドント・ルック・アップ

レオナルド・ディカプリオジェニファー・ローレンス主演、Netflixで公開中の映画。

自らが発見した彗星が地球に激突する事に気づいた女子大生ケイトと担当教授のミンディはそれを警告するために大統領府を訪れるが、中間選挙が近づく大統領はまともに取り合わない。それならとワイドショーに出演するがここでも笑いものにされてしまう。

その後大統領はスキャンダルから有権者たちの目を逸らすめ彗星の脅威を認め、それを排除する作戦を敢行することになるのだが...
...とストーリーを書くと「アルマゲドン」「ディープ・インパクト」のようなSF映画のように思えるが、これは全くSF映画ではなくて、トランプ率いる共和党政権に対する風刺映画なのだ。トランプが地球温暖化を認めず、他の自分に都合の悪い報道はフェイクニュースと呼んだ事、そしてそれに盲目的に従った米国民が多かったことを風刺した映画なのだ。なのでSF的にはかなりいい加減で、今時は実際に彗星が発見されればアマチュアの天文ファンでも軌道計算くらいできる。地球に衝突する可能性が高いなことくらいすぐに分かるし政府が隠蔽して報道されなくてもネットで流布するだろう。アメリカ以外の国もこの脅威に立ち向かおうとするはずで、アメリカ大統領の一存で計画を実行したり中止したりというわけにはいかないだろう。この彗星がどの時期にどの方向にどんな明るさで見えるかも発見時点でわかる筈で、ミンディやケイトが夜空に彗星を見つけて「見えるぞ」と騒ぐのもおかしい。

要人脱出用の宇宙船は明らかに現代の水準から言えばオーバーテクノロジー。2万年も自動で運用できる宇宙船なんて現代の技術ではあり得ないし、こんな宇宙船が作れるのなら彗星くらいどうにでもできたはずだ。

と言うわけでこれは社会風刺映画として見るべきで、そうして見ると経済や国民の支持優先で政府による危機を隠蔽するなど、実際ありそうな話で結構背中が薄ら寒くなるような作品だ。コメディとして見ていられる我々は幸運だと思う。そんな映画に、ケイト・ブランシェットメリル・ストリープといった大物女優からアリアナ・グランデティモシー・シャラメといった今をときめくスターまで豪華キャストで臨むところがアメリカ映画ってすごいなあ、と思う。