川端裕人 青い海の宇宙港

種子島がモデルの島、「多根島」に宇宙遊学生としてやって来た小学6年生の駆。虫とか自然が大好きであまり宇宙には興味がなかった駆だったが、宇宙オタクの周太、フランス人ハーフの萌奈美、地元の委員長タイプの希実の四人で作った「宇宙探検隊」のメンバーとしてロケット作りに関わることになるが...という物語。

小学生の話に、本当は技術の仕事がしたいのに後方に回されて挫折中の宇宙港職員はじめ島の皆さんを巻き込んで行く。ジュブナイル的な作品だが、結構実際のロケットの技術的なことや宇宙開発というお仕事についての記述も多く、最後のほうで打ち上げるロケット・宇宙船の設定などとても正確で、ある意味ハードSFでもある。そこに島独特の空気感と、小学生あるあるな要素も含めて普通に楽しく読めて読む人を選ばないと思う。作品の構成も見事にできていて、特に周太が途中一旦離脱して、復帰してからの物語を動かす原動力になるところなどはお見事である。

島の歴史や風土が宇宙へと繋がっていくのは見事。宇宙のことを語るのにしっかり両足が地についているところが本当に素晴らしい。 

川端裕人さんの作品は以前「川の名前」という作品を読んでとても感心したのだが、これはそれを軽く超えた。ぜひ読んでほしい作品だ。今のところ今年のベストワン候補ナンバーワンかな。