男はつらいよ お帰り 寅さん

2019年末に公開された「男はつらいよ」の、「特別編」を別にすれば25年ぶりの新作。50周年記念作品でもあり、トータルで50作目でもある。

当然ながら寅さんを演じた渥美清はとうにこの世の人ではなく、25年の間においちゃん、おばちゃん、タコ社長を演じていた役者さんもこの世を去っている。そんな中で寅さんの甥満男(吉岡秀隆)を主役に25年後のくるまやの面々を描いたというある意味驚きの続編だ。

満男は数年前に妻を亡くし、高校生の娘と二人で暮らしている。脱サラして今は作家として生計を得ている。饅頭屋だったくるまやはカフェになっていて、旧作で従業員だった三平が店長を務めている。どうやら博とさくらはくるまやに住んでいるらしい。タコ社長の印刷会社はなくなり、アパートになっていて、タコ社長の娘の朱美が住んでいるらしくてくるまやに入り浸っているようだ。そういった設定の中、満男はサイン会で昔の恋人・泉(後藤久美子)と偶然再会するが…というような物語。

満男が泉と結ばれていなかったという事にまず驚くが、まあ人生ってそんなものかもしれない。泉は現実の後藤久美子同様ヨーロッパに住んで、現地の人と結婚している。なので棒読みの日本語はまあリアルだとは言えるが、実際に20年も外国に住んであまり日本語を使う環境になかったなら、もっと日本語が不自由でもおかしくないと思う。

正直同窓会レベルの映画といわれても仕方がないとは思うのだが、さくらや博はもちろん、源公やリリーといった以前のシリーズでおなじみだった人々が登場してきて、そこはかつての国民的映画の続編、他では得られないなつかしさがある事は否定できない。ただなんだか満男のストーリーにかこつけてむりやり寅さんの事を回想している気もしないでもない。

それとこの映画で一番不自然なのは満男の娘ユリだ。過分に大人が妄想する理想の娘像そのもののキャラクターで、こんな女子高生は現実にはほとんどいないと思う。このリアリティのないキャラがちょっと残念だった。