自叙伝 ジャン・リュック・ピカード

米国の人気SFドラマシリーズ「Star Trek: The Next Generation新スタートレック)」(以下TNGと表記)の主人公でエンタープライズ艦長、ジャン・リュック・ピカードが自らの生涯を回顧して書いたという体裁の書籍。実際の著者はデヴィット・A・グッドマンというライター。

TNGは7シーズン178話にわたるTVシリーズと4作の劇場版映画作品という長大なもので、その中にはスタートレックの歴史上重要な事件や、ピカードの過去を語るエピソードも豊富に含まれていたのだが、それをまとめたうえで作者が膨らませて再構成した作品なので、それ自体がスタートレック世界を舞台にした小説のようにも読める。もちろんTNG(というかスタートレックシリーズ全体)をひと通り見ている読者でないとこの作品の面白さは伝わりにくいかもしれない。しかしその辺に詳しい者には、あれはああいうことだったのか!と納得する部分も多い。TNGエンタープライズDの艦長になる以前にピカードが指揮していた、USSスターゲイザー時代のエピソードはこれまでほとんど触れられてこなかった部分でかなり読みごたえがあった。

特に最後の映像作品「ネメシス」以降の、これまで描かれなかった部分が興味深く感じる読者が多いだろう。「ネメシス」の直後、キャスリーン・ジェインウェイ提督と会談中に突如Qが出現しB4をデータにしてしまう(‼)とか、その後ビバリーと結婚し、更にはJJエイブラムスによる2009年のリブート版劇場作品に繋がる、ロミュランの崩壊に至るエピソードが取り上げられたりといったあたりはなるほど、と思う。

ただこの設定が、すでに製作が発表されているピカードの新しいドラマシリーズに反映されるのかどうかは不明。